クリニック職員の成長指針としての人事評価制度を整える
人事評価というものをまったく意識していない院長先生もいらっしゃいます。職員数5名以下の事業所ならば院長が個別に指導育成をおこなうことも可能かと思いますが、それ以上になりますとなかなか目が行き届かなくなります。その意味では、院長がどのような職員になってほしいのかを早い段階で職員に示す必要があります。その手段の一つが「人事評価」で、人事評価は院長がスタッフに提示する成長の指針のようなものです。評価は決して給与や賞与を決めるための手段だけではありません。
院長であれば、クリニックの発展のためにスタッフのレベルが向上することを願っているはずです。その願いがなかなか実現していない理由の一つには、院長の理想がスタッフと共有できていないことにあります。いくら「がんばれ」と励まされても、頑張る方向性が示されていなければ頑張りようがない、ということです。人事評価の大きな目的はスタッフの努力の方向性を示しているものと理解いただければと思います。
「社員教育としてセミナーなどに参加させても、いっこうに効果が定着しない」というのは、このような指針が無いまま、場当たり的に情報提供するだけで終わってしまうことに要因の一つはあるのではないでしょうか。
以下に人事評価の導入を検討する際のポイントを整理します。
【ポイント①】
期待される職員像を明確に提示すること。
職種別、そして等級別に「期待される職員の努力」を具体的に明記します。
はじめから「どんな努力をすれば良い評価になるか」を明示しておきます。この内容が「期待される職員像」となり、全ての職員に、期の初めから「こんな努力をしてほしい」と明示するわけです。
評価は学校で行われるような試験や通信簿ではありません。学校の教育では、教科書に基づいて教えていき、期末または年度末に試験をして結果だけを測定し、評価すればいいのですが、職場ではそうではなく、どんな問題を出すのか(つまりどんな行動を期待しているのか)を初めに明確にしておいてそれに向けて努力してもらうことが重要なのです。
【ポイント②】
評価者スキルを学ぶこと
評価自体は日常的な業務ではないので、スキルといってもなかなか習慣にするのは難しいことです。そこには、評価スキルといった評価のコツを評価者は身につけておく必要があります。
まず、知っておいてほしい評価者の心構えと留意点や評価をするにもぜひ知っておかなければならない基本的なルール、そして自ら気を付けなければならない「評価者のクセ(エラー)」などがあります。それらを知識として知ったうえで実際の評価を行うのと、全く知らないで評価を行う場合とでは、結果に大きな差が生じますので、事前に評価者研修などを受講いただいた上で、評価に入っていただきたいと思います。
【ポイント③】
フィードバック面談を大切にする
人事評価でもっとも大切なキーワードは何でしょうか。それは「透明性」と「納得感」です。
「透明性」とは、人事評価でいえば、どういう評価項目で、だれがどのようなプロセスで評価をしているのかが明確であること。
また「納得感」とは、なぜその評価結果になったのか被評価者が理解し、納得することです。
しかしながらこの納得感が生まれるのはそう簡単にはいきません。なぜなら多くの職員は、自分は一所懸命仕事をし、それなりに仕事で貢献していると思っているからです。
しかしながら、上司の評価がそのようなものでない場合にはだれしも心穏やかではいられないはずです。半ばあきらめて、表面的に納得したフリをしている場合も多いのではないでしょうか。
それでは納得感を醸成するにはどうすればいいのか。まず、絶対に必要なのが、フィードバック面談です。面談では、自己評価と上司評価が明らかに違っている項目に着目し、その評価にした根拠を具体的に話し合うことで、お互いの視点や期待レベルを知ることができ、初めて「納得感」が醸成されてくるものです。
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