院長に是非知っておいてほしいクリニックスタッフ試用期間の取り扱い

試用期間の意味とその注意点をあまりご存じない院長先生も多いのではないでしょうか?試用期間には、採用の「ミスマッチ」を解消する一つの手段でありとても重要です。

もちろん採用時点では、応募者のポテンシャルを信じ、面接を通じ採用が決定されるわけですが、実際にはその期待値と大きくかけ離れていた、ということはよくお聞きます。採用段階での見極めにはやはり限界がありますので、やむを得ないことではありますが、その状態を放置してしまった場合に、問題になるケースもあるので対策が必要です。

試用期間とは

法的な意味では、試用期間は「採用時には知ることが出来なかった事実が、後になって発覚することもあるので、最終決定を一時差し止めて使用者側の解約権が保持されている状態、いわゆる解雇権が留保されている期間」と解釈されます。

試用期間としては、一般的なクリニックでは概ね3カ月程度です。尚、一年を超える試用期間は合理的な範囲を超え無効とされた判決もあります。

「業務への能力や適性に欠けている」「欠勤があまりに多い」等の理由の場合

クリニックはスタッフの試用期間満了までに、業務への適正があるか、勤務態度の出勤状況は良好か、などを見極めると同時に、それらの欠如についてはその都度、改善のための具体的な指導・教育を尽くす義務があります。

一度も、注意指導をあたえることなく解雇した場合、それは無効であるされた判例があります。裁判所の示した見解は「試用期間の者に若干責められる事実があったとしてもこれに対して直ちに解雇をもって臨むことなく会社には教育的見地から合理的な範囲でその矯正、教育に尽くすべき義務がある」というものです(大阪地裁判例)。

これらを踏まえると、そもそも能力が低いからという理由だけで解雇は出来ません。教育指導は行うにしても、現実的な問題として、限られた期間内で教育指導を繰り返し、有効とされる解雇を行うことは、かなりハードルが高いと言わざるおえません。

一定の能力をもつ経験者を募集し、本人もその能力を保証していた場合

求人票の記載や採用時の面接で、クリニックが求める能力や技能などについて応募者自らが「できます」「お役にたてます」と保証していたにも関わらず、実際にはクリニックが求める水準に達していない場合には、本採用拒否や試用期間中の解雇は認められやすいといえます。

経験を前提として採用する場合には、特定の業務を遂行するための具体的能力を持っていることを前提とした労働契約書を締結しておく方法をお勧めします。例えば、「レセプト業務の単独遂行」「〇〇検査の実施」などと具体的記載しておき、その業務を前提とした契約であることが分かるようにしておくことをお勧めします。

幹部採用など収入の高い人を採用する場合

このような方の採用に関しては、試用期間はとても重要な意味を持ちます。その場合には、例えば、試用期間にあたる期間を「有期雇用」として採用し、期間満了後で正社員に転換するという方法も有効な方法の一つとなります。理由は、先述のように無期雇用の試用期間とした場合には、事実上の解雇は難しいですし、仮に解雇できたとしても助成金の解雇要件に抵触してしまうなどデメリットがあります。有期雇用として採用すれば、万が一の場合でも「解雇」ではなく「期間満了」にて契約を終了することが出来ます。また、この方法によるデメリットは、無期雇用社員を前提にしている求職者は、入社を辞退してしまう可能性があるということです。従って、この方法は「幹部採用など高収入の方」に限定して行うことをお勧めしています。

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