クリニックにパワハラが発生した場合の留意点③
ここではパワハラ調査の、第三者に対する留意点を説明します。
もし、相談者(被害者)と行為者(加害者)の話が食い違う場合、院長先生としては、同僚など第三者の証言や証拠で事実認定をしなければならないことになります。
ヒアリング対象の第三者の範囲について
多くは、同じ職場の上司、部下、同僚など、当該パワハラ相談の内容を知っていると思われる職員の方となります。それ以上の広げるのは、よほどの事情がないかぎりお勧めしません。不必要にパワハラに関する噂が広まってしまうからです。
特に相談者と加害者の話が食い違っている場合には、第三者の範囲は慎重に決定する必要が有ります。
基本的には、相談者からヒアリングをした際に、目撃している人や相談している人がいないかを確認します。ただ、相談者が挙げた人だけでなく、院長の判断でヒアリングすべき人がいる場合には、その対象者は会社が決定すべきです。相談者は自分に有利な方のお名前をあげている可能性もあるからです。
そのほか、例えば現場を目撃した外部の方(患者様、ご家族様、仕入れ業者等)も考えられます。そのような場合にはその方との法人の関係や、協力してくれるかどうか等も含めてヒアリングを依頼するか否かを判断すべきです。
どの順番でヒアリングを行うか
一般的には、相談者からのヒアリングをおこなった上で、加害者からヒアリングを行い、事実関係に食い違いがある場合に第三者にヒアリングを行うという流れとなります。被害者と加害者の話が一致していれば問題ないのですが、もし話が食い違う場合、なぜ食い違うのか、どちらの話が正しいのかを判断するためにあたり、相談者からのヒアリングだけですと院長先生としても加害者に突っ込んだヒアリングが出来ない可能性もあります。そのため、場合によっては、相談者からのヒアリングをした後、第三者からヒアリングを行い、事実を固めてから、加害者にヒアリングをした方が良い場合もあります。
従って必ずしもヒアリング順を「相談者→加害者→第三者」に固定せず、どうすれば事実関係を確認できるかを柔軟に変更してよいと思います。
ヒアリング目的をどこまで伝えるか
第三者へのヒアリングで、悩ましいのは、第三者の方にヒアリング目的をどこまで伝えるかです。ストレートに伝えることで、AさんとBさんでパワハラ問題が起きていることがわかってしまい、ヒアリングを受けた第三者が憶測でいろいろなことを職場で話してしまい、結果として二次被害が起きてしまうこともあります。
従って、第三者の方にはヒアリングの目的は伝えるものの、ヒアリング内容は他言してはならない旨を念押したうえで、ヒアリングを実施する方法をお勧めします。
尚、場合によっては、クリニックの中で職場環境アンケートという匿名のアンケ―トをとり、その中に具体的なパワハラに関する記載があれば、そのアンケートを根拠に、第三者に対して「職場環境アンケートの中に、パワハラ問題が起きているのではないかということが匿名で書かれているので、皆さんに知っていることはないかと聞いています」という形でヒアリングする方法もあるので、方法の一つとして知っておいて下さい。
以上