院長先生がいまさら聞けない「有給休暇の基礎知識」
有給休暇の運用につぃて、どれだけ正確な知識を持たれているでしょうか?
多くの院長先生は、概略を理解されているものの正確な知識まではなかなか持ち合わせていないのではないでしょうか。ここでは、日常の運用でよく問題になるケースをいくつか挙げて確認していきたいと思います。
1.有給休暇の法的性質
そもそも有給休暇は、労働者の権利であり、届出で成立するもの。
会社が許可・不許可を判断できるものではない。
また有休取得をする際の理由を聞いてもいけない。
但し、就業規則にて取得日〇日までに届出が必要と規定することは可能。
⇒有休取得は権利行使になるため、届出にて成立し、許可を与えるものではありません。
従って、どのような理由で取得するかも全く自由であり、会社はそれを聞くこともできません。
ただ、社内ルールとして●●日まえの事前申請というルールを就業規則に明記することは可能です。
但し、会社側からの時季変更権というものがあります。
事業主には「事業の正常な運用を妨げる」場合には従業員から申請のあった有休の取得時期を変更できるという権利(時季変更権)があります。
しかし、前日に有休を申請された場合、「事業の運営を妨げるかどうか」を判断する時間的な余裕がなく、また翌日の代替え要因の確保も難しい状況だと思います。結局、時季変更権を行使するか、別の日に変更してほしいとお願いする可能性が高いと思われます。
そのような時のために就業規則に「シフトを作成する前月末までに申し出ること」などのルールを設定しておくことをお勧めします。
原則的な取り扱いとして事前申請期限を指定することは合理的な範囲内において認められると考えられています。
ただし、「3か月前に申し出ること」などあまり長い設定は、有休の取得を抑制するとみなされますので避ける必要があります。
一方、前月末とルールを決めていても、その期限を過ぎて申請してくる場合もあります。
有休は権利性の強い性質がありますので、申請期限を切っているという理由だけで、直ちに有休を与えないということはできません。
この場合でも必要に応じてその日に認めるか、別の日にしてもらうかを判断する必要があるでしょう。
申し出ルールを設けたときの注意点
シフト作成した後でも、身内に不幸があった場合や、急に入院する場合など、このような場合、申し出の時期にかかわらず認めてあげてもいいでしょう。ただ、その場合は、理由をきちんと把握して、やむを得ない事情に限り認めるなど一定の判断基準は必要と思います。
シフト作成後の申し出による変更が慣例的になったり、風邪をひいて休む場合当然のように有休扱いするとなるとルールが形骸化してしまうので原則と例外の扱いを決めておくといいでしょう。
2.有給休暇の取得義務について
2019年4月の法律改正で、年間10日以上有給休暇が付与される方には、年間5日の有給休暇を取得することが義務付けられています。この改正のポイントは、従来であれば従業員の届出にて取得するだけで、取得できなくも会社の責任は特にありませんでした。
ところが今回の改正では、会社側に有休をとらせなければならないという義務が発生するようになりました。従って、従業員各自の有休管理簿を使い有休取得の実態を確実に管理し、取得忘れなどがないように管理しなければなりません。万が一、取得漏れが発覚した場合には、一人当たり30万円の罰金規定が設けられましたので特に注意が必要です。
まとめ
- 有給休暇は労働者の権利であり届出で成立する。上司の許可は不要。
- 会社側の事情で「時季変更権」は認められるが、大切なのは社内の運用ルールの明確化
- 会社は有給休暇の取得義務を負い、違反すると罰金が科せられる