院長の学会出席の日を休診日にして、職員には有休を消化してもらいたいが、問題ないか
職員の有休休暇は、労基法上の従業員の権利なので、原則的にはその取得日程や使い方を雇用者が指定することはできません。
ただ、労基法には「計画的付与制度」というものがあり、その制度を導入し、一定の要件をクリアすれば、学会でクリニックを休診とする日に職員には有休休暇を取得してもらうことは可能です。
1.計画的付与制度とは
計画的付与制度とは、労使協定を締結することにより、特定の日に有休を付与することを認める制度です(労基法39条5項)。
対象と出来るのは、保有している有休のうち5日を超える部分です。つまり最低5日の有休をスタッフが自由に取得できるようにしておけば、残りの有休に関しては労使協定に従った有給取得を義務づけることが出来るという制度です。
すなわち、保有している有休日数が10日の職員は5日まで、14日の職員は9日まで、事業主が指定する日に付与することができます。
2.計画的付与の留意点
ここでの注意点は、計画的な有休の付与日は、あくまでクリニックの所定の労働日に設定するということです。労働契約上すでに休日と定められた日を計画的付与の対象とすることはできません。
計画的付与に関する労使協定において、具体的な付与日程を定める時季や手続きを決定しておく必要があります。この労使協定により、決められた日に変更することなく取得することが出来ます。
学会の期日は、年初が少なくても数カ月前にはわかっていることが多いと思われます。そのため、大体の期間と日数を決めておいて、具体的な期日は「○カ月前までに知らせる」ということでも構いません。
3.労基法で義務付けられた「年5日間」の有休取得義務
2019年に労基法改正により、年10日以上の有休休暇が付与されているスタッフに対して、年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務づけられました。
年5日の有休がとれていないクリニックでは、学会参加の日に有休を充てることが法令順守にもつながりますので、積極的にご検討されたらいかがかと思います。
尚、学会参加による休診が年に5日もない場合は、「夏季休暇」や「その他の臨時休診」などとの組み合わせも可能です。
4.有給休暇が無いスタッフや少ないスタッフの取り扱い
入職して間もないスタッフなど、有休休暇はまだ無い、もしくは残日数が少ないスタッフに対しては、計画的付与を行うと個人で自由にできる5日分の有休休暇を確保できない場合があります。
このようなスタッフに対しては労使協定において、計画的付与の対象者から外しておく必要があります。