クリニックのユニフォームに着替える時間も勤務時間として給与の支払いが必要か
結論からいいますと、勤務前の身支度という観点から、明確な労働時間とは断定できず必ず給与を払わなければならないとは言えません。
1,法的な取り扱いの解釈
例えば工場の現場での安全上の着用(安全靴、安全帽等)が義務付けられたりするような場合や着替えの時間が使用者の監督下にあるような場合には、いわゆる身支度ではなく、職務上の義務であり、労働時間として給与の支払いが必要となります。
しかしながらクリニックでの着替えはそこまで厳格ではなく、使用者の管理下に置かれているような状況でもなく、化粧直しや髪型セット、さらには雑談なども行われているといったものが実態のように思います。
このような状況を踏まえるとユニフォームへの着替えは、始業前の一般的な準備であり、指揮命令を受けて行われるほどのものでもないので労働時間とみなし必要もないということになります。
2,実務上の考え方
社会人として、心身の準備を整えてから仕事に臨むことは基本的な心構えです。クリニックでユニフォームを用意している場合、どうしても着替えはクリニック内で行われることになります。そのような場合、スタッフに「必ず始業時間10分前には出社して着替えをしなさい」という業務命令はしないように注意してください。仮に院長が「10分前に出勤しなさい」と命令をしてしまうと、それは労働時間になってしまいます。
ただ、何も言わないと、始業時間に駆け込んでくるスタッフもいるかもしれません。これでは自動的に労働時間に着替えをすることになってしまいますし、仕事に臨む姿勢として望ましいものではありません。着替えの時間に給料が発生するかどうかという観点よりも、社会人の基本行動として「10分前行動を徹底しましょう」という観点でスタッフ教育を行っていく必要が有ると思います。
3,就業規則の規定例
(出退勤)
- 職員は、始業及び終業の時刻を勤怠システムに打刻しなければならない。
- 始業時刻とは身支度を整えて就業場所にて勤務を開始する時刻をいい、終業 時刻とは業務が終了した時刻をいう。尚、帰宅のための身支度を終えた時刻は退勤時刻という。
- 業務が終了し、勤怠システムに終業の打刻をした後は、速やかに帰宅しなければならない。