クリニック退職トラブル「辞めるときの有休大量消化」をどう対処する?
職員が退職するときに、素敵な職場では次のようなシーンが見られます。
《上司は、退職する職員が引き継ぎなどを終えたら、残している有給休暇を使ってゆっくりと休暇をとるよう職員に促進します。職員は、業務に支障がないように退職を早めに伝え、引き継ぎを終えてから休暇に入り、次のステップへの準備をします。》
一方残念な職場ではこのようなシーンが見られます。
《「こんなクリニックさっさと辞めてやる」という気持ちが感情のすべてを支配しています。
有給休暇を20日以上残している場合、残り全部の取得を請求します。引き継ぎもせず、中には出勤さえしなくなるケースもあります。「当然の権利なのだから」と言って・・・・。》
こうした退職時のトラブルは、クリニックに限らず日常茶飯事です。当社では管理者の方から相談されると「基本、防御策はないですね」とお伝えするようにしています。辞める職員が問題児ならなおさらです。またこのようなケースでは、労働者の退職日を超えて時期変更権は行使できません。「別の日にしてほしい」という「別の日」が退職によって存在しないからです。
実務上の対応策としては以下の2つです
1.本人と相談の上、引き継ぎの日数分退職日を遅らせる
本人が同意してくれることが前提ですが、引き継ぎに必要な日数分勤務してもらい、退職日を遅らせます。これは、事情を理解してもらい、本人の良心に訴えるしかありません。
2.引き継ぎをさせたうえで未消化分を買い上げる
退職日は変えずに、引き継ぎに必要な日数分勤務してもらいます。残りは消化してもらい、消化できなかった分は買い上げます。あるいはすべての有給休暇を買い上げて、退職日まで勤務してもらいます。但し、買い上げは強要しないようにしましょう、この場合、就業規則に「退職にあたっては、担当業務につき所定の引き継ぎをしなければならない」という旨の規程があれば、当該規定に基づき、引き継ぎをするよう求めます。
因みに就業規則には以下のように規定します。
第〇条1.職員が自己都合で退職する時は、少なくとも1月以上前に退職願を提出しなければならない。この場合、職員は担当業務に支障を与えない相当な期間以前に申し出を行うよう努めるものとする。
2.前項の規定により退職するものは、所属長の指示により退職日までの間に引き継ぎを完了しなければならない。
また、すでに転職先が決まっている場合や、クリニックに大いに不満があって退職する場合には、何を言っても時間の無駄です。社会常識に掛けるような人は早く退職してもらったほうが、残り職員の為にもなります。
このようなことにならないように、有給休暇の計画的付与や時間単位有給を採用するなどして有給休暇を取得しやすい職場を整備しているクリニックも多いです。
また退職時に限らず、職員が突然「20日間の有給休暇を下さい」などと申し出る場合もあります。このような場合、業務に支障が出れば「時季変更権」を使い休暇日程を再考してももらうことになりますが、例えば、下記のような条文を就業規則に盛り込み周知徹底をはかるといいでしょう。
第●●条1.職員が有給休暇を取得する場合には原則として、7日前まで期日を指定して届け出るものとする。
2.前条の場合においても、3日以上連続して休暇を取得することを希望する時は、原則として2か月以上前に届け出るものとする。
まとめ
- 退職時の「有休大量消化」は基本、認めざるを得ない。時季変更権は認められない
- 引き継ぎをしてから退職してもらいたい場合の対応策は、本人と話し合い退職日を遅らせてもらうか、または買い上げ処理を打診する
- 就業規則の規定は、会社側の主張根拠と職員への周知に必要なので、要チェック。