プライベートを理由に残業を拒否するスタッフがいるがどのように対処したらいいのか

1.残業を命令するための要件

個々の労働条件(または就業規則)に、36協定の範囲内で残業を命じる旨の記載があれば、スタッフは原則として残業を拒否することはできません。

労働契約の際に、業務上の必要に応じて時間外労働を指示することを書面に定め、スタッフに説明しておきます。そうすれば、労働契約上、院長は一定の業務の都合により残業を命じることが出来、スタッフは残業する義務が生じます。

労基署に提出された36協定届に日付の入った受領印が押されると、それ以降は時間外や休日労働をさせても法律違反にはならないということになります。ただ、労基署への届出を怠ると36協定は効力を発しないので注意が必要です。

2.場合によっては残業を命じることが出来ない場合もあります。

  1. 残業の業務命令が法律上制限されているケース
    妊娠中の女性や産後一年経過しない女性スタッフから請求があったとき、また18歳未満の者などは法律上、時間外休日労働が禁止されています。

  2. 誰が見ても客観的に正当な理由があるケース
    スタッフに残業を拒否する正当な理由があるにも関わらず、これを命じるのは、権利濫用と解される恐れがあります。
    「子どもが交通事故にあった」
    「家族が病気で倒れた」
    のような状況であれば、時間外の指示を出す管理者はまずいないと思いますが、万が一このようなケースは使用者の権利濫用とされる可能性があるので注意が必要です。

  3. スタッフの誠実履行義務
    スタッフは職務を履行するにあたり業務命令には従わなければならず、出来るだけクリニックの経営目標に寄与・貢献するよう十分な注意を払い就労する義務を負うとされています。

    緊急性の低い「何時までに料理を作らなければならない」など日常的な家事を理由に残業を拒否することは残業を拒否する「正当な理由」とはいえません。

    もし命令に従わないスタッフがいれば指導・注意にて改善をもとめます。改善の見込みがない時には懲戒処分を行うことも検討します。

  4. 特別待遇には規律の緩みを生む
    クリニックでよく問題になるのは、スタッフが残業命令を拒否する際に院長の温情や厚意に甘えるような場合です。

    子どもや家事のような理由であっても、つい親心で「それならいいよ」と言ってしまう院長も多いようですが、それを認めるかどうかはあくまで業務上の必要性と比較考慮して判断する必要が有ります。

    スタッフに言われるがまま認めてしまえば結果的に規律の緩みに繋がります。一人に認めてしまうと他のスタッフからも同様な要望が出てきます。もし理由がお子さんのことであったとしても、それによって時間外労働を頻繁に拒否するようであれば他のスタッフから「皆が何とか時間を工面して残業をしているのに、なぜあの人だけ特別扱いなのか」いう声が出てくるでしょう。

    従って、全員同じ時間まで働くという原則は極力守った方が良いと思います。

    もちろん事情(例えば家族が事故にあったなど)によって認めることは必要ですが、その場合には他の人から見ても十分に納得がいくどうかが判断のポイントになると思います。

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