寝坊で遅刻した場合、院長は時間単位有休への振替を認めるべきか。
1.時間単位有休をルール化する場合の留意点
仕事と生活の調和を図り仕事以外の生活時間の確保の為、時間単位有休を導入することで、有休の有効活用を図ることが目的です。
但し、この時間単位有休は全ての事業所に法律で一律に実施されるものではなく、制度導入には労使協定の締結することが要件になります。
従って労使協定が締結されていなければ時間単位の有休は取得できないことになりますのでご注意下さい。
また、時間単位有休を取得できる上限は、1年に5日以内となります。
例えば、所定勤務時間(8時間)で5日分と定めた場合は、8時間×5日=40時間がこの年の時間単位有休を取得できる上限となり、それ以上は通常の有休として1日単位もしくは半日単位で取得させなければなりません。
2.寝坊による遅刻を時間単位有休に振替を求めるべきか
有休とは本来、事前に申請する必要が有ります。
なので事後申請の有休を認めるかどうかは、クリニックの院長の判断になります。
例えば、事後申請は一切認めないとすることも可能です。
ただ、現実的には、事後申請でもその理由(事前申請が出来ない理由)によって事後申請も認める対応が一般的です。
突発の体調不良(自身や家族)等は、事後申請でもやむ負えないと思いますが、寝坊はどうでしょうか。
私は、寝坊による事後申請は、有休と認めるべきではないものと思います。
なぜなら、職場の規律が乱れる原因にもなるためです。
遅刻をしても有休に振り替えられるといった安易の考え方が職場にまん延しないように、事後申請でも理由によって認められない場合があることは事前に規定をする必要があります。
3.時間単位有休は次のことに注意する
時間単位有休を運用する際に、院長として留意しなければならないことを3つ挙げておきます。
① 時間単位有休を1日単位に変更することはできない
時間単位有休で申請されているにも関わらず、1日単位に変更したり、また逆の1日単位を時間単位に変更することを強制することはできません。
② 年5日以上の有休取得義務化における、5日分には時間単位有休の取得は含まれない。
③ 前年度の繰り越しがある場合は、繰り越し分も含めて5日以内とする。
例えば、前年度の繰り越しが2日と4時間であった場合、その年は(2日と4時間)+5日=7日と4時間になるということでなく、あくまで前年度の繰り越し分も含めて5日以内が、毎年の時間単位有休で取得できる上限となりますのでご留意ください。
以上のように、時間単位有休は、通常の有休と扱いが異なることも多い為、トラブルにならないように事前に、制度に関するルールを正確に把握することが必要です。