院長先生が知っておくべき退職金制度【クリニックスタッフの退職金は必須?】

退職金とは

退職金は法律で支払いが義務付けられているものではなく、これまで慣例的に行われてきたものです。もともとは終身雇用制において定年後の生活を保障するという目的がありました。

また、賃金の後払い的性格を有し、これに功労報償的要素が加わり、長く務めるほど退職金も積みあがる仕組みで運用されるという特徴があります。

ほとんどのクリニックスタッフは退職金を意識していない

退職金請求権を直接義務付ける法律はありませんので、クリニックに制度が無ければ支給する必要はなく、退職金制度を設けるか否かは使用者の判断に委ねられています。

クリニックに定年まで働く事を想定して勤務している人はあまりいないのが実態かと思います。

辞めるときになって退職金の有無や金額を知る場合がほとんどで、普段の業務の中で意識することはほとんど無いと思われます。
もちろん退職金にこだわるスタッフもいますが、多くのスタッフはそもそも同じクリニックで何十年も働こうという感覚は無く、退職金に対する意識も希薄のように思われます。

そのため、院長が都度、働きぶりを考慮して額を決定しているクリニックが多くある一方で、スタッフの退職のたびに退職金をどうするかで悩まされたくないことから、退職金規定を作りスタッフに公開する場合もあります。一般的にはこの方法が原則とされますが、規定までは作成せず、あくまで院長の目安としての基準をつくり、職員にはオープンにしない場合もあります。

但し、注意して頂きたいのは、退職金規定でスタッフに約束はしていなくても、基本給に勤続年数を乗じて支給することが慣例的に長年実施されているような場合、既得権となり約束したものとみなされる場合がある点です。

つまり、5年務めたスタッフのほとんどが●万円をもらっている、などとスタッフが当たり前のように認識している場合には、事実上、制度を運用しているものとみなされる場合もあるということです

その場合の退職金は、労基法上の賃金として保護を受け、使用者には支払い義務が生じます。
同時にスタッフは使用者に対して退職金の請求権を有することになります。

従って、内規などに基づいて退職金制度を運用しているクリニックでは、どこかのタイミングで正式に制度を導入するかどうかの判断が必要と思われます。

正式導入までは行わないということであるならば、スタッフが当たり前のように退職金の金額を認識している状態にはならないように、普段から注意しておく必要があるでしょう

まとめ

  1. 退職金は支給するかどうかは任意の為、必ずしも支給する必要はない。但し、退職金規程や雇用契約で規定している場合には支払い義務は生じる。
  2. 退職金規定までは作成しないが、必要に応じて支給はしたい場合、公平性の観点から、院長の中で支給の目安(金額の計算方法)程度は作成しておいた方がよい。
  3. スタッフが当たり前のように退職金の支払いを認識している状態になった場合には、退職金規定を作成し職員にオープンにする必要がある。

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