社員のやりがいを育む3つの要素
橋本 明元(王宮 道頓堀ホテル専務) ※『致知』2016年8月号【最新号】
※特集「思いを伝承する」より
そのためには大きく3つのことが大事ではないかなと思いましてね。
一つは自分たちの意見を聞いてくれる土壌があるかどうか。
当時、ある女性社員から「女性化粧室に姿見を置いてほしい」
と言われたんですよ。男性の私からすると、そんなの要るのかなと
思ったんですけど、買ったんです。
そうしたら、その鏡を誰に言われることもなく綺麗に拭くようになったんですよ。
で、同僚や後輩に「これ私の意見やで」と言っているのを聞いて、
社員さんは自分の意見を聞いてほしい、会社に貢献したいと思っているんだなと。
それで、改善提案制度を導入し、目安箱に自由に意見を書いて放り込めるようにしました。
一切強制はしないのに、もう改善提案の嵐ですね(笑)。
最近は、改善提案したことに対して後でいちいち上役の許可を
取るのもどうかなと思って、一回あたり20万円以内であれば
自由に使っていいことにしています。
──社員に決裁権を与えていると。いわゆる経営者ですよね。
自分で責任を持ってお金を使うことによって
経営感覚が身につくし、会社への愛着も湧くと思います。
二つ目が、会社や経営者が自分のことを大事にしてくれている
という実感があるかどうか。
例えば福利厚生の面では、病院代は全額無料ですし、本人だけではなく、
家族にも適用しています。入院しても手術しても、会社がすべて負担すると。
それ以外には、社員さんの誕生日はもちろん、その配偶者の方の誕生日にも
プレゼントを贈っています。
そこに手紙も添えて、旦那さんや奥さんの会社での活躍ぶりを綴り、
それはご家族の支えのおかげですよ、と心からの感謝を伝える。
そうすると、しんどい時があってもご家族が味方になってくれて、
踏ん張れると思うんです。
──社員のみならず、その家族も大事にされているのですね。
そして三つめが使命感。
自分の仕事が社会の役に立っつている実感があるかどうか。
弊社の使命は「世界中の人に日本の文化・おもてなしを体験 体感していただき
心に残る思い出づくりのお手伝いをします。そして一人でも多くの方が日本を好きに
なってくれるよう努力します」というものです。
みんなが「日本をすきになってもらうんや」とイキイキしながらイベントの企画
や運営まですべてをやっています。
社会の役に立つというと、ついボランティアとか寄付にいきがちですよね。たしかに
それも大事なことで、わたしたちも毎日ホテル周辺の清掃活動を主体的にやっています。
でもそれ以上に大事なのは普段の仕事そのものが社会の役に立っているという実感を
もつことではないでしょうか。
いかがでしょうか。業界は違えど、人材マネジメントに共通している「社員のやりがい」の醸成
という意味では、参考になるかもしれません。