介護報酬改定、各サービスの人員配置基準の弾力化も焦点 審議会で具体策の議論始まる
厚生労働省は来年4月の介護報酬改定に向けて、介護現場を支える人材の確保がこれから一段と難しくなっていくことを念頭に、各サービスの人員配置基準の弾力化を検討していく。限られた貴重な人材の有効活用とケアの質の維持をバランスさせることが求められる。
28日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会 − 。サービスごとに検討課題を洗い出していく“第1ラウンド”が始まったこの日、厚労省は定期巡回・随時対応サービスや小規模多機能、グループホームなどの地域密着型サービスを取り上げた。
このうち小多機では、管理者が兼務できる職務の範囲を限定している現行ルールを説明。「例えば同一敷地内の通所介護でも管理者を兼務できない、などの課題がある。これをどう考えるか」と提起した。
またグループホームでは、3ユニットの事業所の一部に限って夜間の人員配置基準を弾力化した前回改定の措置などを紹介。次期改定ではどんな施策を講じるべきか、を論点としてあげた。
その後のディスカッションでは、人員配置基準の弾力化を前向きに捉える立場、またはやむを得ないとする立場の委員が多いことが分かった。
全国老人福祉施設協議会の古谷忠之参与は、「人手不足が最大の課題。運営基準・人員配置基準の柔軟な取り扱いが重要」と主張。民間介護事業推進委員会の稲葉雅之代表委員は、「コロナ禍での対応なども踏まえ、物理的距離の視点のみに留まらない新たな視点の兼務要件も検討すべき」と要請した。
全国健康保険協会の吉森俊和理事は、「サービスの質の維持を前提として、人材の有効活用の観点から、夜間の人員配置基準の緩和も検討に値するのではないか」と提言。健康保険組合連合会の伊藤悦郎常務理事は、「見守りシステムやICT、介護ロボットなどをうまく活用すべき」と促した。
一方で、認知症の人と家族の会の鎌田松代理事は、「人材が不足しているから基準を緩める、という考え方にとても不安を感じる」と懸念を表明。連合の小林司生活福祉局長は、「人員配置基準を安易に緩和してはいけない」と訴えた。
厚労省は今後、介護保険の他のサービスについても同様に委員の意見を聞いていく方針。現場の実態調査の結果なども踏まえて議論を深め、年内に具体策の大枠を固める予定だ。(介護ニュースより)