介護事業、デジタル申請に 書式統一し負担軽減 来年度から、行政DXを加速

厚生労働省は介護サービスを提供するために事業者が地方自治体に届け出る方法を2024年度からデジタル申請に統一する。自治体ごとにバラバラだった書式も共通にする。介護分野に根強く残る紙文化を改め、行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速につなげる。

 

 244月に介護保険法の改正省令を施行する。一部自治体で電子申請のシステム利用を順次始めており、25年度末までに全国で切り替えを終えるよう促す。現状では特別養護老人ホームの更新手続きに100枚以上の書類を求める自治体もある。行政デジタル化(総合2面きょうのことば)で事業者の事務負担を軽減し、人手不足の緩和も図る。

 

 事業者が介護保険法に基づいて介護サービスを提供して報酬を得るには、事業所ごとに市区町村や都道府県から指定を受ける必要がある。事業所の住所や代表者名、利用者の人数、従業員の体制などを記して申請する。変更があった場合も届け出る。

 

 今後は電子申請が原則となり、提出する情報も共通になる。事業者は複数の自治体に一斉に提出することができ、業務を大幅に効率化できる見込みだ。

 

 介護サービスの種類によっては約6割の自治体が独自の様式で提出を求めている。9月までに国の電子システムの利用を始めるとしたのは7月調査時点で7%に過ぎない。介護保険は市区町村による運営が主体で一定の裁量が認められ、ローカルルールを生みやすい。

 

 事業者は自治体ごとに書類を作成する必要があり、対面提出を求められることもある。必要な情報量もまちまちで、厚労省の調査では特養老人ホームの更新手続きに必要な書類は2枚から149枚と幅があった。

 

 複数自治体で介護サービスを行う大手企業は社長交代などがあれば各地で一斉に変更を届け出る必要がある。申請手続きを専門で担う部署を設ける大手もある。

 

 事業者側からは手続きの効率化を訴える声が強まっていた。デジタル化の遅れなどを考慮して特例として郵送など紙ベースの申請を受けるかなどは自治体が判断する。

 

 同省の別の調査では214月~229月に更新手続きした介護サービスのおよそ1100事業所について、書類作成の負担が「大きい」または「どちらかと言えば大きい」と回答した割合は全体の7割に達していた。

 

 ニッセイ基礎研究所の三原岳上席研究員は「電子化後も自治体が独自に補足文書を求める可能性はある」と話す。ローカルルールを全廃するのは難しく、ルールの細部まで法令で定める案も検討に値すると指摘する。

 

 介護分野の就業者数は21年度に215万人だった。高齢化で40年度には280万人が必要になるとの予測がある。人材確保は容易ではなく、業務の効率化は欠かせない。介護ロボットやICT機器の導入など生産性の向上も急務となる。(日本経済新聞 朝刊 2023/10/26 )

介護業界の経営 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 

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