認可外保育に迫る有料化 来秋、最大で月3.7万円 基準未達、昨年春に2割超
政府は子育て支援のために19年10月、3歳から5歳児を対象に公立の幼稚園や保育所の保育料を無料にした。
自治体の認可を受けていない認可外保育施設についても、国が定めた人員配置や設備の安全基準を守れば月3.7万円まで免除することにした。親の仕事や介護などで「保育の必要性がある」と認められる必要がある。
待機児童の多い都市部などで認可外施設を利用せざるを得ない親もいることから、5年間の経過措置として容認した。この特例が24年10月以降なくなり、無料を維持するには施設側が基準を満たさなければいけない。
国の指導監督基準によると、安全面では保育室の一定面積の確保や転落防止設備の設置などを求めている。保育士に関しては3歳児20人につき1人以上、4~5歳児は30人につき1人以上を配置するよう定める。
政府は自治体による施設の巡回や監査などを通じて基準に届かない施設に改善を求めてきたが、改まらない施設はなお多い。
こども家庭庁によると、最新の22年3月時点で条件を満たさない施設は3500カ所と全体の25%を占める。新型コロナウイルス禍の影響で自治体の定期監査などが簡素化された面があり、同庁は足元でも一定数が未達のまま残っているとみる。
施設の運営事業者が資金不足で必要な設備を導入できなかったり、人材を確保できなかったりすることが背景にある。利用者にサービス内容を掲示する義務を怠るといった事例も一定数に上るようだ。
厚生労働省の調査では、23年7月の保育士の有効求人倍率は2.45倍で全職種平均の1.26倍を大きく上回る。
放置されれば、施設に子供を預ける親にとっては負担増を迫られることになる。年換算では最大で40万円超の支出増となるケースも想定され、物価高も続くなかで家計に打撃となる。政府の子育て支援策の効果も弱まりかねない。
全国で認可外保育所に通う児童数は21年度に23万2995人で3年前より6万人ほど増えた。ベビーホテルの一部など無償化の対象外の児童も含む。
こども家庭庁は11月中旬、基準を満たさない施設の利用者に24年4月の転園を促すよう自治体向けに通知した。改善が進まない場合に、利用者の負担増を避けるための対策だ。
ただ保育所を移るのは容易ではない。公立保育所は原則4月入所となっており、年度途中に希望する保育所に空き定員があることはほとんどない。利用者が転園させたくても実現せず、自己負担が発生する可能性が高い。
窓口となる自治体も対応に苦慮している。東京23区内の担当者は「転園を促すのは現実的ではない。基準を満たさない施設が期限までに改善させると言えば、口約束を信じるしかない」と打ち明ける。
そもそも国による自治体への通知が遅いとの指摘もある。4月入所の公立保育所の申し込みは11月から12月上旬に受け付ける自治体が多く、締め切りを過ぎてしまったケースもあるとみられる。(日本経済新聞 朝刊 総合・経済)