運は自分がこしらえるもの
大正・昭和・平成にかけて活躍した作家の宇野千代さん。
雑誌『致知』に掲載された「運」をよくする秘訣をご紹介します。
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運は自分がこしらえるもの
宇野千代(作家)
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あのね、失恋しやしないか、
失恋しやしないかと思っていると、
失恋するんです。
だから、面白いですよ。
思う通りになるんですからね。
だから、人生、いいように
考えることが大事ですね。
それがもうコツですね、人生の。
人生を渡るコツです。
私の弟が船乗りでしたが、
一回でも舵をとるのをあやまって
船を衝突させたことのある人には
その船会社では二度と船の舵を
とらせなかったそうです。
また衝突しやしないか、
しやしないかと思ってると、
また衝突するんですって。
これは、ほんとに真理ですね。
運が悪いとこぼす人は、私、嫌いです。
自分が運をこしらえるんだものねぇ。
自分が悪いから運が悪いの。
前向きでいつも、自分は運がいい、
運がいいと思うんですよ。思うことですね。
結局、失恋も運が悪いのも自分がもと。
どんなにね、人から見て運が悪そうだとしても、
ああ、私は運がいいなあ、
なんて運がいいんだろうと思っているとね、
運がよくなる。
私は六十歳の時にね、ニューヨークで
ものすごく感動したんです。
ニューヨークの大通りを
観光バスに乗って見物していたら、
私のすぐ近くに腰をおろしていた
一人の若い女がきれいに化粧してね、
花飾りのいっぱいついた帽子をかぶって、
満面に笑みをたたえ、
見るからに幸福でたまらないという
顔をしている。
よく見ると、両手とも
肩からすっぽり切り落とされたように
なっているんです。
それなのに嬉しそうな、
世にも幸福そうな顔をして、
「私は両手とも肩からすっぽりと落ちています。
でも、こんなによいお天気で気持ちがよいのに、
両手がないくらいのことで、
この私が、幸福になってはいけない、
とでもいうことがあるでしょうか。
人間は誰にでも幸福になる権利が
あるんではないでしょうか」
とでも言ってるようにほほえんでいる。
あれだと、思いましたね。
私は、この時の感動を
いまも忘れないですね。
(1987年8月号の『致知』より)
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