【まとめ】居宅介護支援の運営基準どう変わる? 介護報酬改定の変更点が正式決定

来年度の介護報酬改定をめぐり、サービスごとに定められている運営基準の見直しの内容が15日に正式決定された

武見敬三厚生労働相が社会保障審議会に改正案を諮問。同会はこれを「了承する」と答申した


新たな運営基準は今月中にも公布される見通し。ここでは居宅介護支援の改正内容をまとめていく。施行は4月1日。


居宅介護支援は今回、非常に幅広い見直しが実施されるサービスの1つとなった。改正点は固有のものが4つ、全サービス共通のものが3つ。事業所の経営に大きなインパクトを与え得るメニューも少なくない。内容は下記の通り。


2024年度介護報酬改定|居宅介護支援の運営基準の見直し

◆ サービス割合などの利用者への説明


厚労省は2021年度の介護報酬改定で、ケアマネジメントの公正中立性を確保するための措置として、以下の2点を利用者へ説明することを義務付けていた。今回、この義務を努力義務へ変更する


◯ 前6ヵ月間に作成したケアプランの訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与の利用割合

◯ 前6ヵ月間に作成したケアプランの訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与それぞれについて、同一事業者によって提供されたサービスの割合


ケアマネジャーの負担軽減につなげることが狙い。厚労省は審議会で、「事務負担に比して公正中立性を確保する効果が薄い」と説明した。

◆ オンラインモニタリングの解禁


月1回の利用者宅でのモニタリングについて、厚労省はテレビ電話(ビデオ通話)などを活用したオンラインでの実施を始めて認める。守るべき要件は次の通り。


《オンラインモニタリングの実施要件》

(1)利用者の同意を得ること


(2)サービス担当者会議などで主治医、サービス事業者らから以下の合意が得られていること


◯ 主治医の所見も踏まえ、頻繁なケアプランの変更が想定されないなど、利用者の状態が安定していること


◯ 家族らのサポートがある場合も含め、利用者がテレビ電話などを介して意思表示できること


◯ テレビ電話などを活用したモニタリングでは収集できない情報について、他のサービス事業者との連携により収集すること(*)


* 情報連携シートなど一定の様式を用いた仕組みを想定


(3)居宅介護支援は少なくとも2ヵ月に1回、介護予防支援は少なくとも6ヵ月に1回は利用者の居宅を訪問すること


ケアマネの業務の効率化、負担の軽減などにつなげる狙いがある。厚労省は人材不足が深刻化していることも考慮した。引き続き月1回の訪問によるモニタリングを原則としつつ、思い切って条件付きのオンラインモニタリングの解禁に踏み切る。

◆ ケアマネジャー1人あたりの取り扱い件数


厚労省は基本報酬の逓減制を更に緩和する。これとの整合性を確保する観点から、事業所ごとに配置すべきケアマネの人数の基準を次のように見直す。


◯ 要介護者の数と要支援者の数に3分の1を乗じた数を足した数が44、またはその端数を増すごとに1とする


◯ 業務の効率化に向けて、事務職員を配置してケアプランデータ連携システムを活用している場合は、要介護者の数と要支援者の数に3分の1を乗じた数を足した数が49、またはその端数を増すごとに1とする


基本報酬の逓減制の緩和は、貴重な人材の有効活用につなげることが目的。事業所の経営状況の改善、ケアマネの処遇改善を図る狙いもある。

◆ 介護予防支援の指定を受ける際の基準


厚労省は来年度から、居宅介護支援事業所が市町村から介護予防支援の指定を直接受けられるようにする。その際の基準を次のように定める。


◯ 事業所ごとに1人以上のケアマネを置かなければならない


◯ 主任ケアマネの常勤の管理者を置かなければならない

◯ 管理者は、同じ事業所の他の職務に従事する場合や、管理上支障がない範囲で他の事業所の職務に従事する場合を除き、専らその職務に従事しなければならない


◯ 市町村が管内の要支援者の状況を適切に把握できるよう、市町村から情報提供の求めがあった場合は、介護予防サービス計画の実施状況などを提供することとする


居宅介護支援事業所が介護予防支援の指定を受けられるようにするのは、地域包括支援センターの業務負担の軽減が狙い。厚労省は昨年5月に成立した改正介護保険法の中に、こうした制度の見直しを盛り込んでいた。

◆ 管理者の兼務範囲の明確化(全サービス共通)


管理者の兼務について、厚労省は一定の条件のもとで離れた場所にある事業所でも認めることにした。限られた人材の有効活用、より効率的なサービス提供体制の構築につなげる狙いがある。


現行の運営基準をみると、管理者は兼務不可の常勤専従が原則。管理上支障がない場合は同一の敷地、または隣接する敷地にある事業所での兼務が可能となっている。


厚労省は今回、同一・隣接の敷地の事業所でなくても差し支えないことをルール上明確にする。あわせて管理者の責務について、


“サービス提供の現場を適切に把握しつつ、業務・職員の一元的な管理、指揮命令を行うこと”


などと再定義する考え。こうした責務を果たすことを要件として、離れた事業所の管理者・職員としても従事できるようにする。

◆ 身体拘束の適正化(全サービス共通)


厚労省は身体拘束の原則禁止や記録の策定などを新たに義務付ける。不当な身体拘束をなくし、高齢者の尊厳を守ることが狙いだ。


居宅介護支援には今後、特養や老健、グループホーム、介護付きホームと同様に、

(1)利用者の生命・身体を保護するための緊急やむを得ない場合を除き、身体拘束を行ってはならない


(2)身体拘束を行う場合は、その態様、時間、利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由を記録しなければならない


などが求められる。

◆「書面掲示」規制の見直し(全サービス共通)


厚労省は運営規程の概要などの重要事項をウェブサイトで公表することを新たに義務付ける


現行では事業所内での書面掲示を求めているが、これに加えてネットでの情報提供も必須とする。1年間の経過措置を設け、2025年度から義務化を適用する方針。


重要事項の公表方法としては、法人のホームページや情報公表システムの活用などを想定している。(介護ニュースより)

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