介護現場を支える人材の確保・定着に向けた首都の新たな独自策が始まる。介護職員やケアマネジャーらの給与を月1万円から2万円引き上げる補助事業だ。
東京都は3日に専用のポータルサイトを開設。補助金の交付要件や申請手続きなどの詳細を明らかにし、都内の介護関係者に広く周知した。
ここでは、東京都の公表資料を基に新たな補助事業のルールを詳しくまとめていく。
◆ 趣旨
介護人材の確保・定着が目的。介護職の給与が他産業の平均と比べて低いこと、首都の生活コストが相対的に高いことなどを考慮し、東京都は「居住支援特別手当」と銘打って補助金を出すことに決めた。
◆ 補助金額
給与水準が相対的に低い層に重点配分される。勤続年数が5年以内の介護職員に月2万円、6年目以降の介護職員やケアマネらに月1万円が交付される。
月2万円となるのは、雇用を開始した月から続く60ヵ月目まで。ケアマネは勤続5年未満でも2万円の対象にはならない。
◆ 対象職種
介護保険サービス事業所、障害福祉サービス事業所で働く人。所定労働時間が週20時間以上、または月80時間以上であることが求められ、常勤・非常勤は問われない。
《介護保険》
介護職員、ホームヘルパー、サービス提供責任者、生活相談員、支援相談員、介護支援専門員、計画作成担当者など。
《障害福祉》
ホームヘルパー、生活支援員、児童指導員、指導員、保育士、世話人、職業指導員、地域移行支援員、就労支援員、訪問支援員、介護職員、相談支援専門員、サービス提供責任者、サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者など。
上記のうち、「宿舎借り上げ支援事業」などの利用者は除外される。法人の代表者や役員の立場であっても、日頃から上記職員として現場で働いていれば対象となる。
◆ 対象事業所・施設
介護保険・障害福祉ともに幅広いサービスが対象となる。介護保険の訪問看護や訪問リハなど一部例外あり。対象サービス一覧は以下の通りだ。
養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホームなどは、特定施設入居者生活介護の指定を受けていなければ対象外。東京都は地域包括支援センターについて、「区市町村の職員ではなく、予防ケアプラン作成の業務のみで週20時間以上、または月80時間以上働いている職員は対象」と説明している。
◆ 交付要件
給与規程(就業規則)を改定して「居住支援特別手当」を創設し、労働基準監督署へ届け出る。給与規程にはこの手当を、「東京都居住支援特別手当事業補助金交付要綱」に準拠して支給する旨を記載する。
補助金の申請には、改定した給与規程の添付が必要。事業者の既存の手当にこの補助金を充当する取り扱いは認められない。
◆ 交付方法
「居住支援特別手当」の支給予定分が概算で前払いされる。事業所・施設は、その年度の手当の支給予定に基づいて申請を行う。審査後、支給予定額とその金額の15%(社会保険料の事業者負担分相当)が交付される。
翌年度に、実際の支給額に応じた精算・返金が必要。事業所・施設は、支給額が確定した翌年度に実績報告を提出する。あわせて余った金額があれば返金する。
必要書類に不備がなければ、申請から約2ヵ月後に補助金が交付される。補助金を受ける前に「居住支援特別手当」を支給する運用も可能。
◆ 申請スケジュール
申請の受け付けは6月17日に開始される。12月27日まで。4月分まで遡及して申請することもできる。
追加申請が必要な場合については、2025年1月に受け付けが認められる。申請は事業所・施設ごとではなく法人ごとに行う。
◆ 申請手続き
大きく4つのステップに分けられる。
《ステップ1》
ポータルサイトで制度の概要を把握する。ここには補助金の手引きや動画など、分かりやすい資料が全て揃っている。
《ステップ2》
給与規程を改定する。「居住支援特別手当」を創設し、労働基準監督署へ届け出る。
《ステップ3》
申請書類を作成する。書類の様式(Excelファイル)はポータルサイトからダウンロードできる。
《ステップ4》
申請書類を郵送する。作成した申請書類と必要な添付書類を、受け付け期間内に郵送で提出する。
東京都は事業所・施設向けの電話相談窓口(03-4500-0111)を開設しているほか、ポータルサイトに「よくある質問(FAQ)」も掲載している。ポータルサイトのチャットボットも便利で使いやすい。分からないことを尋ねれば、回答を瞬時に得られるメリットがある。