新興感染症に対する診療所の対応力強化へ

日本医師会は 6 月 26 日、診療所を対象に実施した新興感染症対策の研修会の報告書を取りま
とめた委員会の答申を公表した。その中で、「新型コロナウイルス感染症のパンデミック初期で
は感染対策への対応が難しく、個々の医療機関の診療への参加がなかなか進まない状況も散見
された」と指摘。その後、感染様式・感染対策に対する知見の集積、ワクチンや治療薬の臨床
応用が進み、診療参加の改善が図られたとした。そのうえで、特に診療所については、診察
室・待合室のスペースや、医師・看護師の確保、感染対策備品の確保(診察室・待合室など)
などが限られる中で、「どのように診療を続けるかという難しい問題に直面したことを忘れては
ならない」と総括した。
松本吉郎会長からの諮問により、研修の企画と実践を担った委員会では、新型コロナの経験
を背景に、診療所での新興感染症に対する対策を強化するモデル研修を 3 月に実施。その内容
を踏まえた研修を全国の各地域でも展開し、新たなパンデミックの発生に備える必要性を答申
では強調している。また、持続的な研修体制の構築・実践に向けて行政や自治体との連携の重
要性を指摘。自治体と一緒になって地域の実情にあった研修会の開催を期待した。
3 月の研修会には、新興感染症のまん延時に中心となって対応に当たる指導的立場の医師ら
100 人以上が参加した。事前学習として、診療所を想定した標準予防策やゾーニング、PCR 検査
のための検体採取などに関する e-ラーニングを実施。研修会当日は、個人防護具(PPE)や
N95 マスクの着脱などの実技を行ったほか、診療所の図面を用いたゾーニングについて机上演習
を行った。ゾーニングの机上演習では、図面を用いることで手指消毒用の機材を活用するとい
ったアイデアが出るなど、具体的な対応について議論を深めることができたという。
感染症危機管理対策を担当する釜萢敏副会長は一方で、「ある程度のスペースを確保しなけれ
ば、ゾーニングをはじめ適切な感染症対策を実施するのは容易ではない」と指摘。今後新たに
診療所を開設する場合には、「こうした新興感染症への対応を念頭に置いてもらうことが重要」
だと強調した(メディカルニュースより)

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