政府の「専業主婦にも保育園を」政策で、人手不足の現場が混乱。事故のリスク上昇も
2026年度からの本格実施が決まった「こども誰でも通園制度」は、保育施設に通っていない生後6カ月から3歳未満の未就園児を対象に、親の就労を問わず、月10時間程を上限に保育所や認定こども園などで保育サービスを利用できるようにする制度だ.
従来、公的な保育サービスは「育児に困難のある家庭」が対象で、利用できるのは(1)保護者の就労(2)妊娠出産 (3)疾病障害(4)介護(5)災害復旧(6)家庭内暴力や虐待などの「困難」があると認められた家庭だった。これらの「要件」には2015年度から(7)求職活動(8)就学(9)育休中、が追加され利用の間口はやや広がったものの、終戦直後に困窮家庭向けに作られた福祉制度ならではの、利用制限が厳しい「措置的な仕組み」が維持されている。
利用者を選別する行政の裁量が大きいため、保育を希望しても「必要度が低い」と自治体から見なされたら利用は認められず、「待機児童」や「潜在的待機児童」になる家庭が毎年生み出されてきた。
親が就労していない専業主婦(夫)家庭ならハードルはさらに高くなり、「保育施設を子どもに利用させたいから働きに出る」という逆転現象がみられるのも、利用制限がある措置的仕組みのためだ。
しかし、少子化により地域で育つ幼い子どもが減るなか、在宅で子育てする家庭の孤立は深刻化しており、未就園児が多い0~2歳児が虐待死亡事例の半数以上を占めている。
「誰でも通園制度」は、これまで支援が手薄だった0~2歳児の家庭向けに、要件を問わずに保育の利用を一定時間可能とすることで、育児不安や虐待を防ぐ狙いがある。
同時に、地域によっては子どもの人口が減少して定員割れする保育所や認定こども園も出ており、そうした施設にとっては新たな利用者が増えることで「定員割れ対策」となり、運営の改善につながるとの期待がある。