与党の過半数割れ、介護政策にどう影響? 有識者から期待や懸念の声
衆院選の結果が28日未明に決まった。自民党、公明党はあわせて215議席。政治と金の問題などで強い批判にさらされるなか、与党は15年ぶりに過半数の233議席を下回った。
政局の行方は不透明感が強い。与野党の協力関係のあり方など、国会での多数派工作も当面の大きな焦点となりそうだ。
こうした政治状況は、今後の介護政策にどんな影響を及ぼすのだろうか。
有識者に話を聞いた。介護の問題に焦点が当たりやすくなると期待する声、意思決定のプロセスが混乱すると懸念する声などが聞かれた。
淑徳大学総合福祉学部・結城康博教授の話
結果に驚いている。与党はギリギリで過半数を維持するとみていたが、まさかの大敗で非常にびっくりした。
介護業界にとっては良かったのではないか。
介護の問題はこれまであまり注目されず、石破政権でも優先順位が低かった。一方で野党は、深刻な人手不足やいわゆる「介護難民」などを問題として強調しており、衆院選の公約でも施策を強く訴えていた。
与野党の勢力が伯仲すれば、介護の問題もこれまでより取り上げられやすくなる。介護業界にとって良い転機となるのではないか。
◆ 全国介護事業者連盟・斉藤正行理事長の話
政権運営の舵取りは非常に難しくなった。政局はまだ先行きが見通せない。引き続き状況を注視していく必要がある。
それを前提として言えば、当面は意思決定プロセスの混乱が心配される。政策判断に時間がかかり、スピーディーな対応ができなくなる懸念も強い。妥協の産物のようなどっちつかずの方針になったり、先送りされる重要案件が増えたりする可能性もある。もしそうなれば、介護政策だけでなく、日本の社会保障政策全般にとって良いこととは言えない。
過半数は割り込んだが、依然として自民党・公明党は多くの議席を有している。介護政策が直ちに大きく変わることはないだろう。
ただし、野党の発言力がこれまで以上に大きくなることは間違いない。介護職員の処遇改善などの主張が取り入れられ、介護政策が全体として良い方向へ向かっていくことに期待したい。
UAゼンセン日本介護クラフトユニオン・村上久美子副会長の話
立憲民主党や国民民主党が躍進した。労働者の立場から政策を考えてくれる政党が力を持つのは、人手不足が大きな課題の介護業界にとって歓迎すべきこと。今後に期待している。
例えば立憲民主党は、介護職員の処遇改善や訪問介護の報酬減の撤回などを訴えていた。国民民主党は介護職員の処遇改善、ケアマネジャーの更新研修の廃止などを主張している。これらに賛同してくれる介護関係者も多いのではないか。
今回の衆院選は、こうした重要な政策の実現を強く後押しする結果となった。いわゆる「介護難民」への対応などは喫緊の課題で、それを前へ動かす大きな一歩になると強く期待している。(介護ニュースより)