気に障ることがあるとすぐに「辞める」と吹聴し、周囲に迷惑をかける職員がいます。「辞める」といった事実をもとに、辞めてもらうことはできますか。
- 例えば、院長や事務長等の権限者に「辞めます」と伝えた場合、仮に口頭であっても退職の意志を伝えたことになります。一方、職場の同僚や一年先輩の職員に話した程度では退職の意志を伝えたとはみなされません。
- 判例では、退職願を人事部長が受理したことが合意解約の承諾(従業員の退職の申し出を使用者が承認したこと)にあたるとして、その後の撤回はできないとされています(最高裁判例昭62,9,18)。一方、院長以外の人事権を持たないスタッフが退職願を預かっただけの状態では、そのスタッフには退職を承認する権限が無かったとして退職の撤回が認められることになります(岡山地裁平3、11、10)。
- 例えば、院長や管理職の同席する会議や面談の場において「もう、やってられない、辞めます」と発言した場合には、本人都合の退職とすることが出来ます。もちろん、「いつ付けで辞めるのか」はきちんと決める必要があります。
あとで言った言わないの、争いになると困るので退職届の提出を求める必要はありますが、そのように迫ると「やはり辞めたくない」と言ってくることもあります。このような場合は、口頭でも退職意思が確実に示されており、それを診療所として正式に受理しているのであれば、退職意思の撤回は認める必要はありません。但し、その場合の留意点としては、①口頭で退職意思を示した際に、退職意思の念押しと②退職日の確定はその場で行っておくべきでしょう。