医療事業者様向け情報(労務)11月号③
確認しておきたい割増賃金率と就業規則への記載
2010年の労働基準法改正により、1ヶ月の時間外労働が60時間を超える場合の
割増賃金率が50%に引き上げられていますが、これまで中小企業において
猶予されていたこの措置が、いよいよ2023年4月より適用されることとなりました。
そこで、今回は、割増賃金率をまとめると共に、賃金規程への記載の必要性について
とり上げます。
1.確認しておきたい割増賃金率
支払いが義務付けられている割増賃金は大きく分けて3種類(時間外労働、
法定休日労働、深夜労働)ありますが、これらの割増賃金率をまとめると、下表のように
なります。
表 割増賃金率のまとめ
種類 | 支払う条件 | 割増賃金率 |
時間外労働 | 法定労働時間を超えて時間外労働をさせた場合 | 25%以上 |
時間外労働が限度時間(1ヶ月45時間、1年360時間等)を超えて労働させた場合 | 25%以上※1 | |
時間外労働が1ヶ月60時間を超えて労働させた場合※2 | 50%以上 | |
法定休日労働 | 1週1日あるいは4週4日の法定休日に休日労働させた場合 | 35%以上 |
深夜労働 | 午後10時から午前5時までの深夜時間帯に労働させた場合 | 25%以上 |
※1 25%を超える率とするよう努めることとされています。
※2 中小企業については、2023年4月より適用となります。
割増賃金率で計算した賃金の支払義務が生じるのは、あくまでも法定労働時間を超える
労働や法定休日に対する労働となるため、所定労働時間が法定労働時間よりも短くなって
いる場合、その所定労働時間から法定労働時間までの割増賃金を支払う必要はありません。
例えば、1日の所定労働時間が6時間のパートタイマーが1日8時間働いた場合、6時間を
超え8時間までの時間外労働については割増の必要はなく、時給相当額の支払いで足りる
ことになります。
2.割増賃金率の就業規則への記載
時間外・休日労働協定(36協定)に特別条項を設ける場合、限度時間を超える
時間外労働に係る割増賃金率を1ヶ月、1年のそれぞれについて定める必要があります。
そして、これらの割増賃金率については、就業規則に定める必要のある事項
「賃金の決定、計算及び支払いの方法」に該当することから、就業規則(賃金規程等を
含む)に定めておく必要があります。2019年4月(中小企業は2020年4月)より、
残業時間の上限規制が始まることに伴い、この取扱いが労働基準法施行規則に定められ、
企業規模に関わらず2019年4月より適用となります。そのため、特別条項を定める事業所では、
就業規則における割増賃金率の記載の有無を確認し、記載がない場合は整備を行いましょう。
深夜労働に対する割増については、その時間が所定労働時間内であっても深夜に労働した
場合、割増賃金の支払いが必要です。また、時間外労働の時間が深夜になっていれば、時間
外労働の割増賃金率と、深夜労働の割増賃金率を加えた率での支払いが必要になります。
(次号に続く)