医療事業者様向け情報(労務)12月号②
把握が必要となる管理監督者の労働時間の状況
このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とその顧問先の
総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長:働き方改革関連法の時間外労働の上限規制に対応するため、取組みを進めて
います。その結果、一部の部門で、部下に一定時間以上の残業をさせること
ができず、溢れた業務を管理監督者がカバーするという状況が発生しています。
社労士 :そうですか。いまの状態は部下の業務が、管理監督者に移っているだけです
ので、問題がありますね。管理監督者の過重労働が懸念されます。
総務部長:当社では管理監督者も含めて、原則午後10時以降の残業を禁止し、また法定
休日についても出勤を禁止するなど、最低限の過重労働対策はできているよ
うに思いますが、実際、管理監督者が何時に出社し、何時まで残っているの
かを正確に把握できていない状況にあります。
社労士 :管理監督者であっても、深夜労働(午後10時から翌朝5時まで)に対する割増
賃金の支払いが必要となります。原則午後10時以降の残業を禁止していると
いう話でしたが、もし管理監督者が午後10時以降に業務を行っていた場合は、
どのような手続きを行うことにしているのでしょうか?
総務部長:はい、深夜労働については一般従業員と同様に残業申請を行い、本人の申請
に基づいて割増賃金を支給しています。当社では一般社員についてはタイム
カードを利用していますが、今後は管理監督者についても、タイムカードに
より労働時間を把握した方がよいのでしょうか?
社労士 :はい、そうですね。そもそも労働時間の把握については、「労働時間の適正
な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(2017年1月20日
策定)」に基づいて行うことになりますが、管理監督者は対象者から除かれ
ています。しかし、働き方改革関連法の一つとして労働安全衛生法が改正さ
れ、2019年4月より、過重労働対策の観点から、タイムカードやパソコンのロ
グオフの記録など客観的な方法その他適切な方法により、労働時間の状況を
把握していく必要があるとされました。
総務部長:割増賃金の支払いではなく、過重労働対策から労働時間の状況を把握する必要
があるのですね。それでは来年4月より、管理監督者についてもタイムカード
を利用できるように準備を進めたいと思います。
【ワンポイントアドバイス】
1. 労働安全衛生法が改正され、2019年4月より管理監督者についても過重労働対策から労働
時間の状況の把握が必要となる。
2. 管理監督者は、労働基準法の労働時間や休憩、休日等の規定は適用されないが、深夜労働
に対する割増賃金の支払いは必要である。
(次号に続く)