介護事業者様向け情報(経営)1月号③
福祉施設でみられる人事労務Q&A
『採用選考において不適切とされている質問』
Q:
先日、採用面接をした応募者から内定辞退の電話がありました。理由を考えた
ところ、面接で家族の職業を尋ねた際に、かなり怪訝そうな顔をしていた気がし
ます。面接で尋ねてはいけない質問があるのでしょうか。
A:
業務に直接関係のない質問によって、意図せず応募者が就職差別をされている
ように感じ、それだけを理由に内定を辞退するということがあります。また、公
正な採用が行われるよう、法令でも本人に責任のないことや本来自由であるべき
こと等、禁止されている質問事項があります。
詳細解説:
採用の際には、求職者がどのような人かを施設が見極めるため、面接でさまざまな質
問をしますが、ときに施設が行う質問が応募者に不快な思いをさせ、結果、内定辞退を
招いてしまうということがあります。今回の家族の職業を尋ねる質問は、家族の扶養
義務があるかどうか、育児や介護等で時間の配慮が必要ではないかといった目的で
質問するケースがあり、目的自体には何ら問題がないように思われます。しかし、応
募者によっては答えたくない内容もあり、気分を悪くさせてしまうことが考えられます。
また、国は差別のない採用選考が行われるよう法令で制約を設けており、応募者の適性
や能力のみを基準として選考を行うことを原則としています。法令で具体的に不適切とさ
れている質問事項としては、次の事項が挙げられます。
1.本⼈に責任のない事項
本籍地や出⽣地に関すること(⼾籍謄本等を提出させることもこれに該当)
家族に関すること(職業、続柄、病歴、地位、収⼊、家族構成等)
住宅状況に関すること(住宅の種類、間取り等)
⽣活環境・家族環境に関すること 等
2.本来⾃由であるべき事項
宗教に関すること
⽀持政党に関すること
⼈⽣観、信条に関すること
尊敬する⼈物に関すること
労働組合に関する情報(加⼊状況や活動歴等)
購読新聞、雑誌などに関すること 等
面接では一緒に働くことになる人をなるべく知ろうとして、さまざまな質問をすること
になりますが、中には就職差別につながってしまう質問が含まれていることがあり、それ
によって内定を辞退されてしまうだけでなく、SNS 等で批判的な書き込みをされてしまう
ことも考えられます。不適切とされる質問事項を押さえ、応募者の気分を悪くさせること
のないよう、注意して選考活動を進めることが重要です。
(来月に続く)