【介護】人材定着ブログ3月号~ワークライフバランス
「介護スタッフが働き続けられるワークライフバランス支援の仕組みづくり」
前号に引き続き、テーマは「ワークライフバランス」です。今回は、「導入に向けた取り組みについて」から始めます。
1、導入に向けた取り組み
事業所の経営者の方々と話していると、こんな声をよく聞きます。「大切な取り組みであることはわかっているけども、ただでさえ人手不足なのにそのうえ、残業削減、有給休暇取得促進によって現場が回っていくのか、サービスの低下につながるのではないか」。初めての取り組みゆえに、このような心配はよくわかります。しかし、取り組まないことへのデメリット、取り組むことへのメリットを考えて判断していくことが大切なのではないでしょうか。介護業界を取りまく環境の変化への対応と、人材の確保(採用と定着)、今後の法人イメージなどについて、それぞれに影響を洗い出したうえで考えてみてはいかがでしょうか。まずは、出来ることからスタートすることが大切だと思います。
それでは、その取り組み方について、大まかなステップについて説明させていただきます。
(1) ステップ1
まずは、ワークライフバランスや働き方改革への取り組みについて、その目的を明確にして、それを社員に伝えていくことです。例えば、なぜワークライフバランスや働き方改革が必要なのか、なぜわが社はとり組むのか、どんなメリットがあるのか等をしっかり伝え、理解浸透を深めることが必要です。
例えば、ワークライフバランスを実現するための手段の一つである「ロボット・ICT導入」でも、重要なことは「なぜ導入するのか?」「導入して何を目指すのか?」など目的や目標を含めた「定義づけ」をあらかじめしっかりと行っておくことです。そのうえで導入後の「あるべき姿」を職員間で共有することです。さもないと「面倒だ」「邪魔だ」などの理由で、使用を拒絶されることもあります。ロボット・ICT導入に限らず、「導入の定義づけ」、「あるべき姿」を共有していき、それを実現する為の手段という位置づけで推進することがとても重要です。
(2) ステップ2
意識や風土の醸成から取り組みを始めることです。よく、こんな声を聴きます。育児介護と仕事の両立に向けて制度を整えたが実際には使ってもらえない、または、業務効率化に向けて従業員に「インカム」を持たせてコミュニケーションの円滑化をはかったが、実際にはあまり使用されない。これらは、「制度」から入った失敗例といえるのではないでしょうか。制度を導入して、取り組みを行ったつもりでいるのは上層部だけで、実際にはそのような制度を活用できる「風土」がないと制度は機能しません。言ってみれば、「上」からの指示でスタートしても、「やらされた感」的な印象で取り組む限りそれは長続きしません。社員がその目的と必要性をよく理解し、主体
的に取り組めるような状況(組織風土)が必要なのです。
それでは、組織風土の醸成にはどのような取り組みが必要なのでしょうか。例えば、ある法人では「理念」の共通理解を促進するためにセミナーや研修、ワークショップなどを行い、さらに職員満足度調査を行ってアンケート調査やヒアリング、座談会などを行っている組織もあります。それらに共通している取り組みは、「一方通行ではないコミュニケーションの充実化」です。職場におけるコミュニケーションの充実化が最も重要であると言われる経営者や管理者の方々は非常に多いのですが、それを具体的な取り組みとして、どれだけの時間と人的パワーを捻出しているでしょうか?大事だとわかっていても、社員との面談も行えていないという職場も多いのではないかと思います。熱心に取り組む法人のなかには、毎月1回上司との面談を行い、管理者に向けては施設長や理事長とも定期的に面談する機会を設けているところもあります。なんとこの介護施設は延べで年間4000回の面談を設けているそうです。また別の法人では社員の意見に耳を傾け、その中で貴重な意見があれば、経営にも取り込むといった真摯な姿勢、また面談だけではなく、説明会・研修会・小グループでの懇談会などを通じて、社員全員の理解と共有化を推進しているところもあります。そのような取り組みを継続して行っていくことで、徐々に良好な風土が醸成されていき、その結果として、働き方改革やワークラーフバランスなどの「新しい取り組み」に対しても前向きな姿勢で「やってみよう」という雰囲気が生まれ、自主的な取り組みにつながっていくのではないかと思います。
次号に続きます。