【介護】人材定着ブログ4月号②~新人の指導育成~
職員の定着につながる新人・後輩の指導育成法・・・・「ティーチング」と「コーチング」
職員の定着を考えるときに、入職したばかりの新人さんが定着できるかどうかは、とても大切な
視点です。なぜなら、職員のなかで一番「不安」を感じながら仕事をしているのは新人さん
だからです。その新人さんを周りの職員が皆で支援出来れば、新人さんも安心して働くことが
出来ますし、何とか入職1年の壁を乗り切ってくれれば、5年以上は定着してくれる職員に成長
してくれる可能性が高いことも事実です。
そして数ある後輩への支援方法の中で、最も大切なものが職場での「OJT教育・指導」では
ないでしょうか。今回から、定着につながるような「OJT教育指導」の進め方やその具体的
手法のティーチングやコーチングについてお伝えいたします。
1、 OJTの進め方
(1)成長段階における指導方法の3ステップ
新人の成長段階3ステップ 指導方法の3ステップ
ステップⅠ :手順によって仕事を進める力を養う段階 「教える指導」→ティーチング
ステップⅡ :ミスなく、安全、確実に仕事を進める力を養う段階 「気づかせる指導」→コーチング①
ステップⅢ :工夫を加えて仕事を進める力を養う段階 「考えさせる指導」→コーチング②
① ステップⅠ「教える指導」
就職直後数か月間の新人は、右も左もわからない状況です。しかしこの時期の新人は、
先輩たちのように自分の力でどんどん仕事ができるようになりたい、早く仕事を覚えたいと
大変意欲的です。この時期には、まずは業務遂行マニュアルに従って、「仕事をきっちりと
進められるようになる」ことを目的に、「教える指導」を実施します。
「教える指導」の進め方
・指導者自身が「何を、いつまでに、どのレベルまで」指導するかを確認する。
・新人の緊張をほぐし、業務・学習の準備をさせる
・すでにできること、知っていることを確認し、指導ニーズを把握する
・業務の全体像をイメージさせ、知識を系統的に覚えられるように説明する
・ポイントを強調する
・理解できていない様子があれば、繰り返し説明する
② ステップⅡ「気づかせる指導」
そもそも技能を身につけるとは動作を身につける(運動的技能)ことであり、仕事の上で
必要となる勘やコツ・判断力を身につける(知的技能)、という事です。従って学習者が身に
つけるところなので、指導者の教えられる部分は限られます。指導者が教えられることは、
学習者がより主体的になれるように、ゴールや手順を具体的にイメージさせることにとどまり
ます。学習者がその段階をクリアできたら、そのあとは「気づかせる」指導法に移行し、
自分の仕事の癖は何か、成功の要因や失敗の要因は何だったのかを自らが考え、状況にあった
仕事の進め方ができるようになります。
例えば、トイレ訓練などの介助行為は手順に沿って行う運動的技能よりも、その時々の状況で
判断する知的技能が問われます。つまり「気づかせる指導」が必要になります。トイレに誘導する
タイミングが悪く、声をかけたときには既にお小水は出た後だった、という場合に、
「何分ぐらいで誘導すれば間に合った」といった教える指導をしても、結局いい結果は
得られません。判断するための情報は何に基づいていたのか、判断基準は何をよりどころに
行ったかなど、指導者が聞き出しながらズレを考えさせる指導が必要です。
「気づかせる指導」の進め方
・キーワードは「任せて・見る」(仕事を「自分ごと」にする第一歩)
・教えた内容を実際にやらせてみる
・仕事を始める前から、進行途中、そして終了時のそれぞれのタイミングで、丁寧に解説やフィードバックを行う
・ミスの原因は何か、質問して整理させる。
・ミスを未然に防ぐための方法を質問し、気づかせる。
・改善ポイントを説明し、必要なら手本をみせる。
この指導の段階には「コーチング」のスキルが非常に大切になります。
③ ステップⅢ「考えさせる指導」
この段階では、新人に対して「工夫を加えて仕事を進める力を養う指導」を実施することが
ポイントになります。手順をしっかり自分のものにすることができて、仕事の確実性やスピードも
ついてきた。しかし、ここで指導を終わりにせず、常に良い介護を提供するためには、今の仕事に
工夫や改善を加えられる人材になることが求められます。
この段階は、日常業務の流れが自分なりにつかめるようになると、新人の仕事に対する意識は、
「利用者様の個別性に応じた介護を提供して信頼されたい」と高まり始めます。ステップⅢの
ポイントは「教える」ではなく、質問を投げかけて「考えさせる」ことを通じて、新人のスキルを
高める働きかけをしていくことが大切です。「考えさせる」指導の留意点を下記に示します。
・キーワードは「任せ・きる」(仕事を「自分ごと」にできた状態)
・手を貸したいという気持ちを抑えて、周囲を巻き込みながら自力で乗り越えさせる
・仕事の進め方にも自由裁量度を与える
・チューターは後方から見守り介入したくなるのをじっと我慢、黒子に徹した支援
・「自分の力でやり切った」と思えるような達成感。
この指導の段階にもまた「コーチング」のスキルが非常に大切になります。
次回は、「ティーチング」と「コーチング」に関する具体的な留意点をお伝えしたいと思います。
お楽しみに。