介護事業所様向け情報(労務)5月号②
確認しておきたい傷病手当金の支給要件(被保険者期間)
このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とその顧問先の
総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長:今年4月に入社した従業員が、休日にサッカーをしていて転んだそうです。足を
骨折しており、数日は入院、その後も自宅での療養が必要とのことでした。ま
だ年次有給休暇が付与されていないこともあり、欠勤として給与を減額するこ
とになります。このようなケースで健康保険の傷病手当金は支給されるので
しょうか。
社労士 :傷病手当金の支給要件には、①業務外の事由による病気やケガの療養のための休
業であること、②仕事に就くことができないこと、③連続する3日間を含み4日以
上仕事に就けなかったこと、④休業した期間について給与の支払いがないこと、
という4つがあります。今回のお話についても、これらの要件をすべて満たした
ときに傷病手当金が支給されることになります。
総務部長:なるほど。実は入社して間もないにも関わらず、傷病手当金は支給されるのか
ということが気になっていました。
社労士 :傷病手当金の支給要件に、被保険者期間はないため、資格取得後すぐに病気に
なったりケガをしたりしたとしても、先ほど挙げた4つの支給要件を満たせば支
給されます。一方で、傷病手当金には資格喪失後の継続給付がありますが、この
継続給付には被保険者期間が関係します。
総務部長:なるほど。詳しく教えていただけませんか。
社労士 :資格喪失後の継続給付は、傷病手当金を受給している(受給する要件を満たして
いる)上で、資格を喪失したときに、その後も継続して傷病手当金が支給される
制度です。支給されるためには、被保険者の資格喪失をした日の前日(退職日)
までに継続して1年以上の被保険者期間が必要になります。
総務部長:こちらは被保険者期間の要件があるのですね。
社労士 :はい、そうです。ちなみに、ここでいう「1年以上の被保険者期間」には任意継
続被保険者による期間は含まれず、また、任意継続被保険者の期間中に傷病手当
金の支給要件を満たしたとしても、支給されません。
総務部長:あくまでも資格喪失後の継続給付は、任意継続被保険者となる前の被保険者資格
により支給されるということですね。よく分かりました。ありがとうございまし
た。
【ワンポイントアドバイス】
1. 傷病手当金は、原則としてそれまでの被保険者期間に関わらず、支給要件に該当したとき
に支給される。
2. 傷病手当金が資格喪失後にも支給されるための条件のひとつに、資格喪失日の前日(退職
日)までに1年以上の被保険者期間が必要ということがある。
3. 任意継続被保険者の期間中に傷病手当金の支給要件に該当しても、傷病手当金は支給され
ない。
(次号に続く)