医療事業所様向け情報(経営)6月号①
外国人旅行者への医療提供の課題
国が目指す観光立国、来年の東京オリンピック・パラリンピック、2025 年の大阪万博と、外国人旅行者の増加が予想されますが、医療現場ではその受入れが課題です。今回は厚生労働省の調査結果※1 より、費用請求の実態に注目します。
1 点あたりいくらを請求するか
自由診療である外国人旅行者の診療価格設定は悩ましい問題。調査では「訪日外国人旅行客の医療費をどう設定しているか」の問いに対し、90%が「1 点あたり10 円」と回答しました。
外国人患者受入れの多い病院(観光庁訪日外国人旅行者受入医療機関等)では、「1 点あたり10 円」との回答は61%に留まり、27%が「1 点あたり20 円以上」で請求しています。
外国人旅行者の受入れには、言語対応や文化・風習への配慮等にも費用と時間を要します。しかし同調査によると、通訳料を別途請求している病院はわずか1%にすぎず、大半の病院において通訳料を請求していません。医療通訳の費用は自由診療だけでなく、社会保険診療においても請求可能です。
また、外国人旅行者の診療に伴い発生する旅行者保険に関する事務費用や、診療・治療に必要な患者情報について、外国と連絡を取る際に生じる事務費用についても、患者へ請求をすることができます。
今回の調査結果を受け、厚生労働省は通知※2を発し、この件の周知に取組んでいます。
18.9%が未収を経験
回収についても課題が浮き彫りとなりました。昨年10 月の1 ヶ月間に外国人患者を受け入れた病院のうち、18.9%が外国人患者による未収を経験しています。
病院あたりの未収金の発生は平均8.5 件、総額の平均は42.3 万円ですが、中には総額が100万円を超す病院もみられました。
(※1)厚生労働省「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」の結果(概要版)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000173230_00001.html
(※2)厚生労働省「社会医療法人等における訪日外国人診療に際しての経費の請求について(通知)医政総発0328 第1 号」
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000497174.pdf
(次号に続く)