介護事業所様向け情報(労務)10月号②
派遣先会社の立場で考える派遣労働者の同一労働同一賃金
このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長:2020年4月から派遣労働者についても同一労働同一賃金が適用されると聞きました。当社でも派遣会社と契約を結び、労働者を派遣してもらっていますが、対応することがありますか。
社労士 :派遣労働者の同一労働同一賃金は、派遣先会社および派遣元会社の企業規模に関わらず、2020年4月から適用となります。原則は「派遣先均等・均衡方式」として派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇を実現することが求められます。
総務部長:「派遣先の通常の労働者」ということですので、当社の従業員と比較するということですか。
社労士 :はい。派遣先均等・均衡方式では、御社の比較対象となる通常の労働者(正社員等)と派遣労働者の待遇を比較します。そのため、賃金や賞与、退職金等の御社の従業員に対する待遇の情報を、派遣元会社に提供する必要があります。なお、この待遇には慶弔休暇等の福利厚生に関する事項も含まれます。
総務部長:なるほど。かなり細かい内容まで派遣元の会社に伝える必要があるのですね。
社労士 :そうですね。派遣元会社は提供された情報に基づき、派遣労働者の待遇を個別に決定します。そのため、派遣労働者は派遣先が変わるたびに待遇が変わることになります。そのようなことを避けるためにも、例外として「労使協定方式」で行うことが認められています。これは一定の要件を満たす労使協定を派遣元会社の労使が締結することにより、その協定に沿った待遇とすることができるというものです。
総務部長:労使協定方式にすると、賃金の取扱いはどうなるのですか。
社労士 :毎年度、厚生労働省から同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金水準が公表されます。この賃金の額と同等以上の賃金額を派遣元の会社が支払うことで、派遣労働者の同一労働同一賃金が確保されていると判断されることになります。
総務部長:なるほど。当社から待遇の情報を提供する必要がなくなるということですね。
社労士 :そうです。ただし、教育訓練と福利厚生施設(食堂・休憩室・更衣室)は、労使協定方式とする場合でも派遣先の通常の労働者との均等・均衡を確保することが求められるので、情報提供の必要があります。ご注意ください。
総務部長:承知しました。ありがとうございました。
【ワンポイントアドバイス】
1. 派遣労働者の同一労働同一賃金の対応には、「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」がある。
2. 「派遣先均等・均衡方式」では派遣元に自社の従業員の待遇の情報を提供する義務がある。
3. 「労使協定方式」の場合でも教育訓練と福利厚生施設は、派遣先での均等・均衡が必要であり、派遣元に対して情報提供をしなければならない。
(次号に続く)