【介護・保育】人材定着ブログ11月号~介護・保育 「福祉事業に必要なキャリアパスとは①」

1、はじめに

皆さん、こんにちは。

今月号から福祉事業所の資格等級制度・評価制度・賃金制度といった制度(これらの制度の総称をキャリアパス制度といいます)や職員の定着率に繋がる職場の環境改善といったテーマについて、毎回の連載でお伝えしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

2、法人がキャリアパス制度を整備することによるメリット

法人がキャリアパス制度を整備するメリットは、どのようなものがあるのでしょうか。以下のようなことが考えられます。

  • 公正な人事処遇(昇格・昇給)が可能になる
  • 職員自身の人事処遇に対する納得感が高まる
  • 法人への信頼感が高まり、帰属意識が高まる
  • 仕事に集中する環境ができ、達成感やモチベーションにつながる
  • 採用時にキャリアパスを説明することにより、信頼できる法人であることをアピールできる
  • 人材不足の時代に求人活動がしやすくなり、人材確保につながる

私が介護業界の各事業所にキャリアパスの支援を始めてから7年になりますが、キャリアパスを整備し、きちっと運用している法人では、上記の効果が発揮されていることを実感いたします。ただ、もちろんメリットばかりではなく、デメリット(課題)もあります。例えば、整備を進めるには、決して少なくない業務工数や人的なパワーがかかります。整備後に、いざ運用となっても、このような制度に不慣れな介護現場では、抵抗感を持つ職員が多いのも現実です。運用の仕方を誤ると、かえって職場の混乱を招くこともあります。多くの事業所では、キャリアパス制度の整備から運用まで約3年から5年程度の時間をかけながら、少しずつ組織への定着を図っているのが現状です。

3、キャリアパス制度とは

そもそもキャリアパス制度とは、どのような制度なのでしょうか。言葉の意味としては「職員のキャリア形成に関する道筋」などと訳されますが、具体的にはどのような制度のことなのか、ご説明いたします。

まずは、制度の構成と全体像を見ていきましょう。

ご覧の通り、資格等級制度を中心にして、人事評価制度・賃金制度・教育研修制度が、それに連動して整備された制度と言うことが分ります。

そこで、各制度とその目的を整理すると以下のようになります。

制度 目的
資格等級制度 役割(役職)と業務によって規定される「マス目」毎に求められる要件を明らかにする
人事評価制度 求める水準とその評価基準を明確にし、達成度を判定する
教育研修制度 仕事に必要な知識や技術・能力を身につけさせ、磨く
昇格制度、任用制度 評価の結果を踏まえワンランク上にあげる条件や基準を定める
賃金制度 役割(役職)と業務によって規定される「マス目」に応じた賃金水準を定める

すなわちキャリアパスとは、「介護職員についてどのようなポスト・仕事があり、そのポスト・仕事に就くために、どのような仕事能力、資格、経験が必要になるかを定め、それに応じた給与水準を定めること」ということになります。1人1人の職員は「自分がどこのマス目(資格等級)に属しているのか」や「そこでは何が求められるのか」を意識して仕事に取り組むことになることで、仕事のプロセスや成果、職員の能力が「該当するクラスの要求レベルを満たしているかどうか」が確認出来るようになります。また、ワンランク上のマスに進むために何が足りないのか明確になることで目標が出来、達成するために必要な研修等を受講し、スキルアップに努めるようになります。昇格すれば、それまでよりも重い職責、難しい職務内容を担うことになり、能力もより高いものが求められますが、その分、給与水準も高くなります。職員はあらたなステージで求められる水準を意識しながら仕事に取り組むようになります。

4、キャリアパス制度と介護職員処遇改善加算

ご承知のとおり、2017年の介護保険法改正で「介護職員処遇改善加算Ⅰの取得要件」に「キャリアパス要件」が具体的に明示されました。

  • 介護職員の職位、職責又は職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を整備すること
  • 資質向上の為の計画を策定して研修の実施または研修の機会を確保すること
  • 経験もしくは資格など応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること

この法改正を契機に、キャリアパス制度に関する必要性が本格的に広まることになり、制度整備の気運が一気に高まりを見せ始めました。

次回は「キャリアパス制度に関する介護事業者の実際」からお伝えしたいと思います。

以上

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