保育事業所様向け情報(労務)11月号①
育児短時間勤務を運用する際のポイント
育児・介護休業法では、3歳未満の子どもを育てる従業員が希望したときは、1日の所定労働時間を原則として6時間に短縮することを企業に義務付けています(育児短時間勤務)。育児休業から復帰した後にこの制度の利用を希望する従業員は多く、また、制度を使いやすいものにして欲しいという要望も多く寄せられることから、以下では制度のポイントを確認しておきます。
1.対象となる労働者
育児短時間勤務は、3歳未満の子どもを育てる従業員が対象となる制度ですが、そもそも1日の所定労働時間が6時間以下の従業員は制度の対象外となっており、労使協定を締結することで、入社1年未満の従業員や、業務の性質や実施体制により制度の対象とすることが難しい従業員は、制度の対象から除外することができます。なお、制度の対象から除外した業務の性質や実施体制により制度の対象とすることが難しい従業員については、育児短時間勤務の代わりとなる制度の導入が義務付けられます。
厚生労働省の「平成30年度雇用均等基本調査」から、育児短時間勤務制度の最長可能期間を企業ごとに見ると、3歳未満が25.6%、小学校就学の始期に達するまでが19.1%で上位2つになっています。子どもの保育所の送迎などに時間を要することもあり、法令を超えた子どもの年令まで制度の対象とする企業も一定数あることがわかります。
2.労働時間数の選択
育児短時間勤務では、1日の所定労働時間を6時間とすることが求められますが、通常の1日の所定労働時間が7時間45分である企業もあることから、1日の所定労働時間が5時間45分から6時間までであれば、6時間に短縮していることと認められます。
なお、従業員から1日の所定労働時間を5時間や7時間にしたいという要望が聞かれますが、法令では6時間に短縮することを求めており、それ以外の選択をできるようにすることまでを求めてはいません。1日の所定労働時間を6時間とできるようにしつつ、所定労働時間数を選択できるようにしたり、隔日勤務のように所定労働日数を短縮する制度を選択できるようにすることも可能です。企業の状況によって導入を検討してもよいでしょう。
3.始業・終業時刻の選択
保育所に子どもを預けながら働く場合、保育所の開所時間によって従業員が働くことのできる時間が左右されることもあります。そのため、1日の所定労働時間を6時間に短縮しつつ、短縮後の始業・終業時刻を選択することを希望する従業員がいます。法令では始業・終業時刻を選択できるようにすることまでを求めていないため、始業・終業時刻については企業の状況に応じて決めることができます。
育児短時間勤務の制度内容を柔軟にすることで、育児をする従業員にとっては働きやすい環境になりますが、その反面、周囲の従業員に過度の負荷が掛かることもあります。従業員の要望により法令を上回る制度とするときには、従業員全体のバランスも考慮にいれておきたいものです。
(次号に続く)
社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人