働き方改革法改正で何が変わるの?長時間労働是正 編
何がどう変わるのか、ご説明いたします。
法改正スケジュールを確認しましょう
※1 法人単位で常時使用する労働者数が100人超かつ資本金の額または出資金の総額が5,000万円超
※2 法人単位で常時使用する労働者数が100人以下または資本金の額または出資金の総額が5,000万円以下資本金または出資金がない場合は労働者数のみで判断します。
(医療機関の規模は病床数ではなく、労働者数等で判断します。)
大規模医療機関はすでに適用になっており、中小規模医療機関はこの4月には適用になります。
チェックしてみましょう
表を使ってチェックしてみましょう。
1つでも「NO」がある場合は注意が必要です。
Check① 年次有給休暇の年5日の時季指定が義務付けられます
※規模問わず全ての医療機関に適用
年次有給休暇が年10日以上付与される労働者に対して、自ら申し出て取得した日数や計画的付与で取得した日数を含めて、年5日取得させなければなりません。
Point1 自院の年次有給休暇の付与ルールを確認しましょう
職員ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、使用者(理事長、院長等)が取得時季を指定して与える必要があります。医療機関によって基準日は異なりますので、就業規則を確認するなど自院のルールを再度確認してみましょう。
Point2 年次有給休暇管理簿を作成する必要があります
年次有給休暇の基準日、与えた日数、取得・指定した時季を明らかにした書類(年次有給休暇管理簿)の作成が義務付けられました。曖昧な管理体制になっている医療機関は管理方法を変えなければなりません。
Point3 年次有給休暇をとりやすい医療機関を目指しましょう
時季指定をするまでもなく、職員が年5日以上有給休暇を取得できるような職場づくりが大切です。休暇をとりやすいように業務内容を見直す、計画的付与を導入するなど対策を講じましょう。
Check② 労働時間の状況の把握が義務化
管理監督者(※)を含めるすべての労働者の労働時間の状況を、客観的な方法その他適切な方法で把握するよう義務づけられました。
Point1 産業医制度を活用しましょう
事業場単位で常時使用する労働者数が50 人以上の場合、産業医の選任義務があります。また理事長や院長等が、自身の病院の産業医になることはできません。
Point2 すべての職員の労働時間を把握できる体制を整えましょう
長時間労働(時間外労働が月80時間超)を行った職員がいる場合、産業医に情報提供するとともに、職員本人にも通知し、職員が申し出た場合は医師による面接指導を行わなければなりません。まずは、すべての職員の労働時間がきちんと把握・集計できる仕組みが整っているのか確認してみましょう。
(※)管理監督者とは
管理監督者に当てはまるかどうかは役職名ではなくその労働者の職務内容、勤務体系、待遇を踏まえて実態により判断します。
- 経営者と一体的な立場で仕事をしている。
- 出勤、退勤や勤務時間について厳格な制限を受けていない
- その地位にふさわしい待遇がなされている。
上記に当てはまらない場合は管理監督者とはいえず、残業代を支給する対象となります。
Check③ 時間外労働の上限規制が定められます
※医師については2024 年4月に適用(施行内容を検討中)
◎時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。
◎臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、
・年720時間以内(休日労働を含まない)
・複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
・月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはできません。
また、原則である月45時間を超えることができるのは、年6回までです。
Point1 36 協定をきちんと結びましょう
労働時間は原則1日8時間・1週40 時間以内とされており、これを超える場合は36 協定(時間外労働、休日労働に関する協定)の締結、労働基準監督署長への届出が必要です(月45 時間、年360時間を超える場合は特別条項付36 協定)。きちんと締結、届出をしているのか確認しましょう
Point2 時間外労働・休日労働を必要最小限に留める工夫をしましょう
36 協定の範囲内であっても、使用者(理事長、院長等)は職員に対する安全配慮義務を負います。また、労働時間が長くなるほど過労死との関連性が強まります。時間外労働がなるべく発生しないようにするため、変形労働時間制やワークシェアリング、時短勤務など柔軟な働き方の導入を検討しましょう。
Point3 休日労働をきちんと把握しましょう
「複数月平均80 時間」には休日労働を含みます。時間外労働45 時間を超過していなくても、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月それぞれの時間外労働+休日労働が80 時間を超えていないか注意が必要です。
その他の法改正項目
◆「勤務間インターバル」制度の導入が努力義務になりました
「勤務間インターバル」制度とは、1日の勤務終了後翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間を確保する仕組みであり、働く方々の十分な生活時間や睡眠時間を確保できる制度です。この制度を導入することにより、職員の十分な生活時間や睡眠時間を確保することができると期待されています。
◆中小規模の医療機関でも月60時間超え残業の割増賃金率が引上げられます2023 年4月より、月60 時間超の残業割増賃金率が50%に引き上げられます。
「働き方改革」は負担だらけ?
- 答えはNO!やり方次第で大きなメリットが得られます
医師の健康に配慮した相談体制・就業措置により早期離職防止へ
課 題
医師の早期離職が相次いで発生。以前から給与計算を委託している社労士からも、残業代が増加傾向にあり、医師の長時間労働が常態化しているのではとの指摘があった。現状を把握すべく
医師に向けてアンケート調査を行ったところ「人員不足により休憩がとれない」「夜勤明けも引継ぎで帰れない」「疲れが原因のヒヤリ・ハットが心配」など職場の疲労の色が浮き彫りとなった。
対 策
職場環境を改善すべく、経営者は社労士と産業医に相談。産業医の相談窓口に加え、新たに働き方に関する相談先として社労士による相談窓口を設けた。また社労士は、メンタル不調を未然
に防止するために、産業医が必要と判断した際は「労働時間の短縮」や「深夜業の減少」等の措置を行うと就業規則に記載するよう提案し、病院側の体制について医師等に向けて説明会を行った。
結 果
長時間労働をなくしたいという病院側の姿勢が伝わり、離職希望者が減った。顧問社労士や産業医による相談窓口があることにより、安心して働くことができるとの声も多く寄せられるようになった。医師自身のモチベーションが上がり院内に活気が戻ったため、患者からの評判もよく、病院の評判も高まっている。
社労⼠は、「⼈を⼤切にする」働き⽅改⾰の専⾨家です。
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社会保険労務士法人
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林正人