【介護・保育】人材定着ブログ1月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは⑥」
【介護・保育】人材定着ブログ12月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは⑤」の続きです。
2、人事制度を整備することによるメリット
それでは、人事評価制度を中核とした人事制度を整備することで、法人全体にどのようなメリットが生まれるのでしょうか。それを今一度、下記に整理をしてみたいと思います。人事制度の整備により、公平な人事処遇(昇格、昇給など)が可能となる。
- 職員の自分の人事処遇への納得感が高まる。
- 法人への信頼感が高まり、帰属意識が高まる。
- 仕事に集中する環境が出来、「達成感」やモチベーションにつながる
- 採用時に人事制度を説明する事により、信頼できる法人であることをアピールできる。
- 人材不足の時代に求人活動がしやすくなり、人材の確保が出来る。
以上のように、人事制度の整備は「人材の確保と育成」につながる効果が期待できるものです。
それでは、その効果を発揮させるために必要な評価制度構築に向けた考え方、評価制度の設計方法、さらには運用方法について以下に述べていきたいと思います。
3、キャリアパス(人事制度)の中の人事評価
ここでは、人事制度のなかで人事評価の役割をみていきます。
- 経営理念に基づく行動基準(規範)を「見える化」する。
- 期待する職務・役割に基づく職務基準・職能要件を「見える化」する。
- ①と②を日々の業務への取り組みの中で具体化する。
- 人事評価(職能評価と行動評価)を行う。
- 人事評価の結果により、達成感の醸成と今後の課題を明確にする。
- 課題達成のための教育(能力開発・研修)を行う。
- 評価を処遇に反映(昇給、賞与、昇格、昇進)させる。
- 各人の能力に見合った処遇の実現を図る。
この流れの順序でキャリアパスの運用を実際に行うことが、「人材の確保と育成」を
目的にした人事評価には、非常に重要な要素であると考えています。
ポイントは、日々の業務を行う前に、期待される役割、職務内容、行動基準を理解したうえで、業務をスタートさせることです。つまり、職務基準、行動基準を事前に整備することで、職員はその内容を知識として知り、そしてOJTで習得し、実践するということになります。
そして、数か月後の職場での実践状況を評価するものが、人事評価です。つまり、業務スキルの習得・実践状況は「職能評価」で、行動基準の理解と実践の状況は「行動評価」で評価を行うことになります。
評価が良ければ、処遇に反映され、評価が水準を満たさなければ教育・指導(研修・OJT指導)によりレベルアップを図り、達成できれば処遇に反映させます。その結果として、各人の能力・役割と処遇のバランスが取れるようになるのです。
4、介護事業者が陥りやすい、人事評価の5つの問題点
その1:評価は出来る職員とダメな職員を分ける事ではない
職員相互を比べて評価するのではなく、多くの職員が成長できる評価制度にすることが重要です。いつも優秀な職員が良い評価で、そうでない職員がそのままでは「人を育てる」
評価制度とは言えません。
評価では、職員が行うべき「努力を具体的に」示すことが大切です。上司が部下にこう言ったとします。「もっと仕事を効率的にしてもらわないと困るよ」。すると部下は「わかりました、そうします。ところで効率的に仕事をするってどうすればいいですか」と聞き返してきました。この時の回答として「明日使う予定の・・・」といったものであれば、効率的に行うコツがわかるわけです。どうすれば良い結果がでるのか、そのコツを着眼点として明確に記載し、そのコツ、つまり努力をしたかどうかを評価する仕組みとすれば、それは結果そのものではなく、「良い結果を生むであろう行動と努力」を明確にすることにより、職員の成長が期待出来ます。つまり、評価制度で諦める職員をつくらない、なかなか良い結果を生み出せない職員が「出来る職員」に育つ仕組みを評価制度に盛り込むことが大切なのです。
その2:期末に評価するというやり方では、職員は育たない
一般的に評価は期末に行われることが多いのですが、問題は、その時の評価者が「彼はどんな行動をしたのか、それはなぜか」そして「あの行動は、どの評価要素で判断すればいいのか」そして「評価は何が適切なのか」と考えてから評価を決定する方法です。そして期末の評価で良かった点、悪かった点を通告される。部下からすれば、先に「こんな行動をしてくれればS評価にするからね」と言ってくれればそうしたのに・・・と思ってしまうかもしれません。つまり、評価が人を育てる目的ならば、人がどんな行動をすれば良い評価になるのかをあらかじめ明示しておくべきなのです。「そのような行動・努力がS評価になり、どのような行動がA評価・・・になるのか」を示すことで部下は期待される行動や努力の仕方がわかるので、実践するようになるわけです。
また、これを意識して仕事をしてもらう為のツールとして、各個人に職員ノートを持ってもらい、その中に期待する行動・努力を記載したシートを入れ、週に一度は自分で見直してみることを行っている法人もあります。年に一度や二度の評価では人は変われません。大切なことは「習慣づけ」ということです。
評価制度の目的を「人材育成」とするには、上記のような視点をもって評価制度の仕組みを構築していく必要があります。次回は、今回の引き続き、人事評価制度をお伝えします。
社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人