介護事業所様向け情報(労務)2月号③
懲戒処分の種類と減給処分を行うときの留意点
従業員が労働契約の内容に違反したり、就業規則の服務規律を守らない場合に、会社は懲戒処分を下すことがあります。懲戒処分を下すためには、就業規則に事前にその内容を定め、定められた就業規則の規定に基づいて対応する必要があります。そこで、以下では一般的な懲戒処分の種類と、その中でも減給処分を行う際の留意点を確認します。
1.懲戒処分の種類
懲戒処分は、いくつかの段階を設けて、懲戒すべき事案が発生するたびに、どの懲戒処分を下すかを決定します。厚生労働省が公開する「モデル就業規則(平成31年3月)」では、以下の4種類の懲戒処分を設けています。
①けん責
始末書を提出させて将来を戒める。
②減給
始末書を提出させて減給する。ただし、減給は1回の額が平均賃金の1日分の5割を超えることはなく、また、総額が1賃金支払期における賃金総額の1割を超えることはない。
③出勤停止
始末書を提出させるほか、〇日間を限度として出勤を停止し、その間の賃金は支給しない。
④懲戒解雇
予告期間を設けることなく即時に解雇する。この場合において、所轄の労働基準監督署長の認定を受けたときは、解雇予告手当(平均賃金の30日分)を支給しない。
なお、降格や降職、諭旨解雇(諭旨退職)等、これら以外の懲戒処分を定めることも認められています。
2.減給の上限
1.にある「②減給」は、よく見かける懲戒処分の一つですが、処分内容として記載されているとおり、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えることはできず、同一月において懲戒の事案が複数となり、その複数の事案について減給を行うときであっても、減給の総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えることはできないと、労働基準法に定められています。
3.賞与で減給を行う際の留意点
減給は賃金で行いますが、賞与で行うことも認められています。この場合、賞与から減給を行う旨を就業規則に定めておくことが必要です。そして、賞与で減給を行うときであっても、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えることはできません。
なお、賞与の支給額を会社の業績や、賞与の算定期間中の人事評価に基づき決定することがあります。この際、懲戒の事案がこの人事評価のマイナスの要素となり、結果として減給の上限を超える額が賞与支給額から減額されたとしても、問題はありません。
減給の上限は、従業員の生活を過度に脅かすことのないように、設けられたものです。そもそもの事案に対する処分として、減給が妥当なのかを十分に検討するとともに、誤った取扱いをしないようにしましょう。
(次号に続く)
社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人