【介護・保育】人材定着ブログ2月号~介護・保育 「福祉事業に必要なキャリアパスとは⑧」
【介護・保育】人材定着ブログ12月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは⑦」の続きです。
5、評価制度を効果的に運用するためのポイント
(1)職員と情報を共有しながら、人事制度を作り上げていく
一般的に、人事制度は総務部および幹部職員が中心となって作っていくケースが多いと思いますが、できるだけ構築の段階から職員と情報を共有し、可能な限り意見を聞きながら制度を作り上げていってください。特に、制度検討にあたり、人事評価やキャリアパスの導入メリットを職員同士で共有したうえで、スタートできれば理想です。職員が制度構築への参画意識を持つことで、上層部からの押し付けではなく、自分たちが作った制度という意識を持って進めていくことは、その後の運用に大きな意味を持ちます。
(2)事後評価、抽象評価を改善する
一般的に評価制度の運用では、事後評価が行われていることは前述しました。つまり期の終わりに評価が行われるのです。この評価のための評価制度を改める必要があります。今までの評価制度は次のような欠点を抱えています。
・目的達成度といった具体的な評価要素はありますが、抽象的な評価要素(例えば責任感、協調性など)も多く、評価される側にとっては評価の基準が明確にはわからない。
・職員の能力や努力を「後になって」または「1年後に」に(メモしておいて行うか、思い出して行うかは評価者によって差があると思うが)評価する。
・評価する場合の着眼点として、何を評価するかが不明確なまま期が始まる。従って、職員はどのような行動や努力をすべきなのかが不明確なまま新しい期を迎える。
このように、評価は抽象的な着眼点で、かつ事後評価が基本的な運用になってしまっています。これでは、職員を育てる評価制度の運用になってはいないのです。
(3)事前指導、具体的行動評価にしよう
職員を育てるための制度にするには、次に述べる評価制度が大切です。評価によって優秀な職員を発見するのも大切ですが、それよりも先に行わなければならないことは、普通の職員の能力を高めることによって組織全体のサービスの質を上げることです。一人の優秀な職員のヤル気を高めるよりも、多くを占める普通の職員のヤル気を高めることの方が大切であることを理解してください。
・組織全体のレベルアップを図ることを目的とする。
・部署別、職種別、そして等級別に「期待される職員の努力」を具体的に明記する。
・はじめから「どんな努力をすればS評価になるか」を明示しておく。この内容が「期待される職員像」となり、全ての職員に、期の初めから「こんな努力をしてほしい」と明示する。
評価は学校で行われるような試験や通信簿ではありません。学校の教育では、教科書に基づいて教えていき、期末または年度末に試験をして結果だけを測定し、評価すればいいのですが、職場ではそうではなく、どんな問題を出すのか(つまりどんな行動を期待しているのか)を初めに明確にしておいて、出来るだけ多くの職員が優秀な成績、つまり5段階評価ならS評価やA評価を取ってもらうようにすることが必要なのです。
その場合、必ず意見として聞こえてくるのが、「良い評価が増えれば、人件費が増加してしまうのでは?」という懸念です。もちろん、評価結果を反映させる処遇財源(例えば、処遇改善加算)は確保しておきながら、その財源の限度内で分配を行う管理手法は必要になってきます。それは給与制度における昇給や賞与の仕組みにかかわるところなので詳細は割愛いたしますが、総枠人件費の考え方で収支管理を行っていくことも重要な視点です。
社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人