医療事業所様向け情報(労務)3月号②
労働基準監督署の調査でよく聞かれる36協定(特別条項)に関する事項
※2019年4月施行の改正労働基準法の内容を前提としています。
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長:
来月、労働基準監督署の調査が行われることになりました。事前の準備物に「時間外・休日労働に関する協定届」(以下、「36協定」という)とありますが、どのようなことを確認されるのでしょうか?
社労士:
御社では、36協定に特別条項をつけて届出をされています。特別条項は過重労働の原因になりやすいということで2019年4月の法改正でも様々な規制が加えられ、労働基準監督署の調査でも重要事項とされています。そこで今回は以下の4点を取り上げましょう。
- 限度時間を超えて労働させる場合における手続きが、特別条項に該当する月ごとに行われているか
- 限度時間を超えて労働させることができる回数が年6回以内となっているか
- 延長することができる時間数および休日労働の時間を超えていないか
- 限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置(健康福祉確保措置)を実施しているか
総務部長:
1.について当社は、過半数代表者に事前の申し入れを行うことにし、書面を渡しています。
社労士:
それは素晴らしいですね。調査では、その事前の申し入れが行われているか確認されるので、申し入れ書の控えやメールで申し入れをしていればその文面等を残しておく必要があります。
総務部長:
なるほど。当社では限度時間を超えて労働させることは稀ですが、②の年6回以内とは、会社として年6回以内でしょうか、それとも従業員ごとに年6回以内でしょうか?
社労士:
従業員ごとに年6回以内です。そのため、従業員ごとにカウントし、年6回を超えないようにする必要があります。③については、36協定で定めた時間の範囲に収まっていることが必要です。その上で、例えば特別条項で90時間と記載してあり、90時間の範囲に収まっていたとしても、2~6ヶ月平均で月80時間を超えてはいけないという時間外労働の上限規制の内容がありますので、それを遵守する必要があります。
総務部長:
なるほど。36協定に記載した内容だけを遵守していたとしても、問題となるケースがあるのですね。④については、対象労働者に医師の面接指導を実施することにしていますが、それを実施しておくということですね。
社労士:
はい。実施と併せて、実施状況に関する記録を36協定の期間中と有効期間満了後3年間保存することになっています。実施後は記録を残しておくことまでが求められます。
【ワンポイントアドバイス】
- 限度時間を超えて労働させる場合、事前に定められた手続きを行い、その書面等を残しておく。
- 36協定に記載された内容とともに、時間外労働の上限規制も遵守する。
- 健康福祉確保措置を実施した場合、記録を残し、36協定の期間中と有効期間満了後3年間は保存しておく。
(次号に続く)
社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人