医療事業所様向け情報(経営)4月号③
医療機関でみられる人事労務Q&A
『時間外労働の上限規制の適用が猶予となる医師と36 協定を締結する際の留意点』
Q:
当院では、医師を含む職員を対象として、毎年時間外労働・休日労働に関する協定(以下、「36 協定」という)を締結しています。今回締結するものから、改正労働基準法における時間外労働の上限規制が適用となりますが、医師はこの上限規制の適用が猶予されると聞きました。今後、どのような形で36 協定を締結していけばよいでしょうか。
A:
医師は、2024 年3 月31 日まで時間外労働の上限規制の適用が猶予されています。したがって、医師以外の職員に適用される36 協定を医師に適用しないというのであれば、別の様式による36 協定の締結が必要となります。
詳細解説:
1.時間外労働の上限規制の適用猶予
2019 年4 月1 日に改正労働基準法が施行され、時間外労働の上限規制が設けられました。ただし、業務の性質等により、すぐに適用するのは困難である等の理由から、上限規制の適用が猶予となる事業・業務があり、医師もその中の一つになります。猶予期間は、2024 年3月31 日までの5 年間とされており、具体的な上限時間等については、医療業界の参加による検討の場において、規制の具体的なあり方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得ることとされています。
2.上限規制を適用しない医師と36 協定を締結する際の留意点
大企業に該当すれば、2019 年4 月1 日以後の期間のみを定めた36 協定から、中小企業に該当すれば、2020 年4 月1 日以後の期間のみを定めた36 協定から新しい様式で届け出ます。限度時間を超えない場合は『様式第9号』、限度時間を超える場合は『様式第9 号の2』を使用します。
これまでは、医師を含む職員全体と1 つの36 協定を締結していたという医院が多かったと思いますが、今後、医師以外の職員に適用される36 協定を医師に適用しない場合には、医師と医師以外の職員を分けて36 協定を締結することになります。医師については、『様式第9 号の4』を使用します。
なお、36 協定締結時の職員代表については、医師のみを対象とした36 協定であっても、医師の過半数代表者ではなく、全職員の過半数代表者と締結することになります。
上記のように、医師については時間外労働の上限規制の適用が5 年間猶予されますが、長時間労働が常態化している現場は数多くあります。また医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な理由がなければ、これを拒んではならないという「応召義務」があり、上限規制が設けられたとしても、すぐに対応することが難しいでしょう。上限規制の適用は猶予されていますが、日々の労務管理や現状の課題について、できることから取り組み、あわせて健康確保のための方法についても検討を進めていくことが求められます。
(次号に続く)