医療事業所様向け情報(労務)7月号④

妊娠中の従業員等に対し実施が求められる母性健康管理措置

妊娠をした従業員から、つわりがひどいため勤務時間を短縮して欲しいといった相談が会社に寄せられることがあります。妊娠や出産は病気ではないものの、企業には一定の母性健康管理措置が求められます。そこで以下ではこの措置の内容に関して確認しておきましょう。

1.母性健康管理措置

男女雇用機会均等法では、妊娠中および出産後1年以内の女性従業員が保健指導・健康診査の際に主治医や助産師(以下、「主治医等」という)から指導を受け、会社に申し出た場合、その指導事項を守るために必要な措置を講じることを会社に義務付けています。

この指導事項を守るために必要な措置としては、以下の3つが挙げられます。

① 妊娠中の通勤緩和
例:時差通勤、勤務時間の短縮、交通手段・通勤経路の変更
② 妊娠中の休憩に関する措置
例:休憩時間の延長、休憩回数の増加、休憩時間帯の変更
③ 妊娠中または出産後の症状等に対応する措置
例:作業の制限、勤務時間の短縮、休業、作業環境の変更

主治医等から指導を受けた内容を会社に伝えるために、「母性健康管理指導事項連絡カード」の利用が勧められており、このカードで会社はいつまでの期間、どのような措置が求められるのかを把握することができます。

2.新型コロナウイルス感染症に関する措置

新型コロナウイルス感染症への感染には緊急事態宣言が解除された後にも留意が必要とされますが、職場の作業内容等によっては、新型コロナウイルス感染症への感染について、妊娠中の女性従業員が不安やストレスを抱えるケースが出てきています。そのため、母性健康管理が適切に図られるように新たな措置が追加されました。

追加された内容は、妊娠中の女性従業員が、保健指導・健康診査に基づき、その作業等における新型コロナウイルス感染症に感染するおそれに関する心理的なストレスが母体または胎児の健康保持に影響があるとして、主治医等から指導を受けた場合で、それを女性従業員が会社に申し出たときには、会社はこの指導に基づき、作業の制限、出勤の制限(在宅勤務または休業)等の必要な措置を講じなければならないというものです。

今後、主治医等からこのような指導があった場合、まずは母性健康管理指導事項連絡カードを会社に提出してもらったうえで、実情に合わせた対応を検討することが求められます。

なお、この措置の対象期間は、2020年5月7日から2021年1月31日までとなります。

実際の措置として勤務時間を短縮した場合、給与の取扱いについて対応に困ることがあり 。ます。就業規則に特別な記載がない場合の基本的な考え方は、ノーワークノーペイに基づき、短縮した部分については給与を支払う義務はありません。会社の方針を決めた上で、定めをしておくとよいでしょう。

(来月に続く)

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