【介護・保育】人材定着ブログ8月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは⑭」
【介護・保育】人材定着ブログ7月号~介護・保育 「福祉事業に必要なキャリアパスとは⑬」
の続きです。
今回も前回に引き続き、介護業界「賃金」についてお伝えしします。
(1)賃金水準
業界全体の職種別賃金水準と比較して、どんなレベルなのか、また地域の中の同業と比較したときに問題はないか、など。厚労省の職種別賃金や地域のハローワークからの情報を入手し、分析してみることをお勧めいたします。
(2)職場における賃金バランス
職場における賃金バランスの実態を把握することで、課題を把握し、不満因子になる前に、改善に向けて具体的に推進していくことが必要です。
①年齢別バランス
②管理職と一般職のバランス
③中途採用者とのバランス
④職種別のバランス
5、再構築の制度設計の方向性
(1)基本給の考え方
基本給は何で決定されるか。基本給は賃金制度における核であり、これをどのような決め方にするかで賃金制度の骨格が定まるといってよいと思います。基本給には、年齢給、勤続給、職能給(能力給)、成果給といった性質の給与で決められているという理解が一般的ですが、今回のキャリアパス導入に伴う性質からは、職能給的な性格で、能力に応じて基本給が決まるという考え方です。
キャリアパスの導入に伴い、基本給は職能給的な要素となり、今後益々この方式が採用され拡大していくものと考えています。
手当も基本給同様で「仕事的要素」の手当に集約されていく方向にあるものと考えます。
(2)職能給について
職能給とは職員の職務遂行能力に応じて支給する賃金のことです。つまり職業能力の高い職員には高い賃金を、職業能力の低い職員には低い賃金を、という考え方です。その職遂行能力を具体化したものが職能資格制度です。職能資格制度に基づき、個々の職員に対して、職能資格(等級)が決められて、職能資格に対応する賃金が支給されることになります。このようにして決められる賃金のことを職能給と呼びます。
(3)職能給・職能資格制度の功罪
職能給の長所としては、第一に能力開発、自己啓発を推進させるというメリットがあります。職務遂行能力が高まれば給与があがることになるわけですから、職員の能力向上のモチベーション向上につながります。第2に職員を異動させやすいというメリットがあります。業務は違っても等級に応じた役割は他の職場でも同じ前提ならば、配置転換をしても賃金(基本給)を変える必要はありません。したがって、事業の都合や職員の能力開発に応じて異動させることが可能になります。
他方、短所としては、第一に運用を適切に実施しないと年功的な賃金になる恐れがあるということです。それは、職員個々の職務遂行能力を評価することは難しいからです。
第2に職員の担当能力と賃金とのバランスが取れないことがある点です。職員の能力が高まっても、適切な仕事が与えられるとは限らないからです。以上のメリットと課題を理解したうえで、職能給・職能資格制度を取り入れていっていただきたいと思います。
6、基本給の具体的検討事項
(1)等級制度と連動した給与水準(範囲給の設定)
- 範囲給による賃金テーブルのレンジ表の例
(2)人事評価結果の反映の方法
職務役割の遂行度、スキルアップの向上・達成度を人事評価で評価し、その結果で
毎年の賃金を改定します。下記は等級毎の評価結果に対応する上昇号棒数と金額を示します。
- 賃金テーブルと昇給額の連動表の例
・昇給額は、人事評価の結果により等級ごとに変動する号棒数(ピッチ数)を決めます。
上の例では、A評価は3号俸(3ピッチ)UP B評価は2号棒(2ピッチ)UP、
C評価は1号俸(1ピッチ)UPとなっています。
(3)諸手当の見直し
諸手当はそれなりに目的をもって、特定の条件を満たす職員に対して支給しています。したがってどんな手当であろうと、それなりに理由があるのであって、一概の否定することはできません。そうはいっても、むやみやたらに各種手当をもうけるのも問題です。多くの事業所では、これまで様々な手当を設けてきています。諸手当の多くは、賞与や退職金に反映されないという点で、事業者にとって人件費を抑圧するという面があります。しかし、諸手当の種類があまり多すぎると、賃金が複雑になりわかりにくくなるととともに、手当の重複なども懸念されます。
では、どのような手当が必要でしょうか。一般的には、通勤手当、家族手当、役職手当、所定外手当程度でよいのではないかと考えています。各事業所におかれては、現在支給している手当の目的や背景などをもう一度見直し、精査が必要と考えています。
手当の検討ポイントをまとめると下記のようになります。
- 手当の目的・意義の明確化
- 不要な手当の統廃合
- 廃止する手当は一旦、調整手当
- 場合によっては新規採用者から減額や廃止
以上の視点で、現状の手当を見直してみると課題が見えてくるものと思います。