ウィズコロナと労務管理
コロナの状況は、留まることを知らず、感染が広がっている
状況です。
決定的なワクチンが開発されない限り、否応なしに新
型コロナウイルスと共存・共生しなくてはなりません。
そのようなウィズ・コロナでは、労務においても従来に
なかったような問題が押し寄せ、その対応により会社の
真価が問われる時代になりました。身近なところでは、
休業補償、安全配慮義務、そして採用リスクの高まりです。
1.休業補償という意識の高まり
コロナ関係のニュースでは、「休業補償」という言葉
が、よく出てきますが、働く人の意識もこの言葉にかつ
てないほど高くなっています。
●「休業要請」と「休業補償」
ニュースで飲食店などへ休業要請云々とくれば、必ず
「じゃあ、休業補償は」という話になります。国に直
接の責任があるわけではありませんが、営業の自由を
制限するわけですからそのようなことになります。
この話は、会社と従業員の間でも同じであり、「休ん
でください」といえば「じゃあ、休業補償は」となり
ます。
●不可抗力とはいうものの
コロナの影響による事業縮小のため従業員を休ませる
場合、要件を満たせば自然災害のようなもので不可抗
力ですから会社に休業補償義務はありません。しかし、
一般の従業員は不可抗力という言葉すら分からないは
ずです。そうなりますと、法律上はともかく、「会社
は休業補償をしない」と、社内に不満が蔓延(まんえん)
してくるのではないでしょうか。
●前もってルール化しておく
コロナでは事業縮小だけでなく、県外へ行ったとかで
感染の疑いがある場合などに用心のため休んでほしい
こともあります。このような場合は、法的には休業補
償が必要なのですが、支給する休業手当額(率)を前
もって取り決めておくと良いかもしれません。実際に
は用心のために休んでもらうケースが多いと思います。
2.安全配慮義務意識の高まり
安全配慮義務とは、会社が従業員の安全を確保しな
がら労働することができるよう、必要な配慮をするこ
とですが、コロナの影響により、その意識が高まって
います。
●感染への不安増大
確かに、毎日発表される感染確認者数を見れば不安が
増大するのは当然です。テレワーク・リモートワーク
が良いと言っても中小企業ではまだまだ少数派です。
ほとんどは、従来と変わらず出勤し仕事をしています。
もし、社内にこれといった感染防止策がとられていな
ければ、感染への不安はさらに増大します。
●「〇〇すら、やっていなかった」
もちろん、コロナに限ったことではありませんが、
何か事件・事故が起きますと「〇〇すら、やっていな
かった」ということになります。仮に自社も同じくら
いのことしかやっていないのに、他社のことは批判し
やすいものですし、さらに尾ひれがついて拡散します。
世間はこのような話が好きなのです。
●見えるカタチで従業員への周知
どこまでやっておけば会社の安全配慮義務を果たせる
かというのはありませんが、行政などから発表されて
いる最低限の措置は必要です。例えば、毎日の体調、
検温報告、マスク着用、手洗い、体調不良者への休暇
取得奨励などですが、これを紙に書いて職場に貼り出
して周知します。口頭だけより周知しやすくなります。
3.採用リスクの高まり
コロナの影響で転職を余儀なくされる人も多くなり、
いろいろな業界から多様な人材が応募対象になります。
応募者数は増えますが、同時に採用リスクも高まります。
●他業界からの転職
できれば慣れた仕事が良いので、多くの場合は似たよ
うな業界からの転職になります。しかし、コロナの影
響による転職の場合はそうもいっておられず、まった
く違う業界からの転職も増えてきます。求人難の会社
にとっては、応募者が増えてありがたいのですが、
応募者が多いということは、採用リスクも高まるとい
うことにもなります。
●通じにくい業界の常識
良い悪いは別にして、業界には雇用関係においても常
識というものがあります。しかし、他業界から来た人
にとっては、その常識は非常識であるかもしれません。
もちろん、その逆もあります。今までなら、口にしな
くても何となく通じていたことが通じにくく、下手に
こちらの常識を押し付ければトラブルの元です。
●まずは法律を基準にする
お互いの常識が一致していない、または一致している
かどうか分からない場合に、最もおすすめは法律を基
準にすることです。法律には基本的に感情もなければ
期待もないので、客観的だからです。具体的には、
労働条件を取り決め、契約書にして取り交わしてから
働いてもらう、採用時の健康診断をキチンと行うこと
などです。
ウィズ・コロナの労務においては、今まで以上にYES
とNOを明確にしておく必要があるように思います。
感情や常識はもちろん重要ですが、その前に法律に基づい
て雇用することにより会社の真価、つまり本当の価値が問
われる時代なのかもしれません。
何かのご参考になれば幸いです。