医療事業所様向け情報(労務)12月号③
パートタイマーへの賞与支給~最高裁判決の考え方~
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。
総務部長:
少し前に、新聞やテレビで「契約社員やアルバイトには賞与や退職金を払わなくてよい」というような報道がされていました。当社では、同一労働同一賃金への対応としてパートさんにも賞与を支給する方向で検討していましたが、支給しなくてもよいのでしょうか?
社労士:
2020年10月に言い渡された5つの最高裁判決の中で、大阪医科薬科大学事件とメトロコマース事件についてご覧になったようですね。大阪医科薬科大学事件は主にアルバイトに対する賞与の支払いについて、メトロコマース事件は主に契約社員の退職金について争われた事件です。
総務部長:
確か、それら以外にも郵便局に関する事件がありましたね。
社労士:
はい、東京、大阪および佐賀の3つの日本郵便事件がありました。こちらは、正社員と契約社員の休暇や手当に関する訴訟でした。大阪医科薬科大学事件では、先ほどもお話したようにアルバイトの賞与が主な争点になり、原告であるアルバイトに賞与を支払わないことは「不合理と認められるものに当たらない」と判断されました。
総務部長:
ポイントは、正社員とアルバイトの仕事が異なっていたことなのでしょうか。
社労士:
おっしゃるとおり、判決文ではアルバイトの職務内容が「相当に軽易であることがうかがわれる」と表現されており、正社員とは職務内容が異なっていました。ただ、それだけではなく、雇用期間に上限があり、実際に3年2ヶ月の雇用期間であったこと、その間に私傷病で1年強、休職していたことも影響しているかと思います。
総務部長:
なるほど、単純に「アルバイトだから」と一括りにしてはいけないように感じますね。
社労士:
そうですね。また、アルバイトから契約社員、契約社員から正社員への登用制度が設けられており、実際に登用制度により契約社員や正社員になった人も多数います。つまり、登用されることで賞与が支払われる契約社員や正社員になることができる機会もあったのです。
総務部長:
雇用期間もそれほど長くない状況で、正社員とは異なる職務内容であった。さらには努力次第で非正規雇用から、最終的に正規雇用にも移ることができるような職場環境であったということですね。
社労士:
まさにそのとおりです。当然、最高裁判決ですので人事労務管理の実務に大きく影響しますが、判決の詳細の内容を確認せずに、結果だけで「アルバイト=賞与の支給不要」と考えてしまうと、拙速な判断となりかねないのでご注意ください。
【ワンポイントアドバイス】
- 同一労働同一賃金に関する5つの最高裁判決が言い渡された。
- 最高裁判決は人事労務管理に影響を及ぼすが、結果のみでなく個別事案として背景や経緯も見て参考とする必要がある
(次号へ続く)