R3年報酬改定 グループホームの整備要件緩和・新設要件創設について確認しておきましょう
2021年度介護保険法改正・報酬改定の全貌が明らかに
2021年1月18日に具体的な改定額が公表され、ようやく全貌が明らかになった2021年度介護保険法改正・報酬改定。皆様におかれましても情報収集と共に、「どの加算を取るか?」等の確認・検討作業を既に進められていることと存じます。小幅ではあるものの全サービスにおいて基礎報酬が増額される等、例年に比べると比較的緩やかな改正内容で落ち着いたかと思われますが、それでも様々な加算に込められたメッセージ、及び3年後の改定を見据えた場合、現段階から入念に準備を進めておくべき内容も数多く含まれているかもしれません。中でも「最も大きな変化の一つ」と感じられたのは恐らく、グループホームではないでしょうか。今回は今後の新規展開の一助となることも視野に、グループホーム整備基準の緩和・新設について採り上げてまいりたいと思います。
グループホームの整備基準の緩和・新設 その具体的な内容とは
では、早速、中身を確認してまいりましょう。まずは整備基準緩和内容の1つめについてです。(以下)。
(現行)
共同生活住居(ユニット)の数を1または2とする。ただし、用地の確保が困難であることその他地域の実情により事業所の効率的運営に必要と認められる場合は、共同生活住居の数を3とすることができる。
↓
(改定後)
共同生活住居(ユニット)の数を1以上3以下とする。
今までグループホームを新設する際、「最大2ユニットまで」という要件が付されることが全国的にも多く、3ユニットの整備認可はほぼ不可能、というのが一般的だったかと思われます。しかし、今回の上記改正により「3ユニットの整備」が基本的に認められることになり(地域の整備状況にもよるかもしれませんが)、経営の効率性が増してくることにも注目が集まるかもしれません。
加えて2点目の緩和内容(下記)もリンクしてくるでしょう(以下)。
<現行>
1ユニットごとに1人
・1ユニット : 1人夜勤
・2ユニット : 2人夜勤
・3ユニット : 3人夜勤
↓
<改定後>
1ユニットごとに1人
・1ユニット : 1人夜勤
・2ユニット : 2人夜勤
・3ユニット : 3人夜勤
ただし、利用者の安全確保や職員の負担にも留意しつつ、人材の有効活用を図る観点から、3ユニットの場合であって、各ユニットが同一階に隣接しており、職員が円滑に利用者の状況把握を行い、速やかな対応が可能な構造で、安全対策(マニュアルの策定、訓練の実施)をとっていることを要件に、例外的に夜勤2人以上の配置に緩和できることとし、事業所が夜勤職員体制を選択することを可能とする(追加)。
「各ユニットが同一階に隣接しており、職員が円滑に利用者の状況把握を行い、速やかな対応が可能な構造で、安全対策(マニュアルの策定、訓練の実施)をとっていること」という適用要件はしっかりとおさえておかなければならないものの、上記条件に適合できる立地・物件が見つかった場合においては十分、検討に値する内容ではないかと思われます(本緩和要件適用の場合、「1人あたり50単位の減算」という条件は付されることになりますが)。これらの要件緩和の魅力度は地域によって変わってくると思いますが、是非、頭に留めておいていただいた方が宜しいかもしれません。
最後に3点目、「グループホームにおけるサテライト型事業所の創設」を確認してまいりましょう。
【サテライト型事業所の創設】
(基準)※本体事業所と異なる主なもの
・本体事業所との兼務等により、代表者、管理者を配置しないことが可
・介護支援専門員ではない認知症介護実践者研修を修了した者を計画作成担当者として配置することが可
・サテライト型事業所のユニット数は、本体事業所のユニット数を上回らず、かつ、本体事業所のユニット数との合計が最大4まで
続いてサテライト型事業所の基準・報酬案についてです。
サテライト型事業所の人員基準
(介護予防)認知症対応型共同
生活介護(本体事業所) サテライト型(介護予防)
認知症対応型共同生活介護
代表者 認知症の介護従事経験若しくは保健医療・福祉サービスの経営経験があり、認知症対応型サービス事業開設者研修を修了した者 本体の代表者
管理者 常勤・専従であって、3年以上認知症の介護の従事経験がある認知症対応型サービス事業管理者研修を修了した者 本体の管理者が兼務可能
介護従業者 日中 常勤換算方法で3:1以上 常勤換算方法で3:1以上
夜間 時間帯を通じてユニットごとに1以上 時間帯を通じてユニットごとに1以上
計画作成担当者
介護支援専門員 介護支援専門員であって、認知症介護実践者研修を修了した者1以上 認知症介護実践者研修を修了した者1以上
サテライト型事業所のその他基準・報酬
(介護予防)認知症対応型共同生活介護
(グループホーム)
サテライト型事業所の
本体となる事業所 認知症グループホーム
※ 事業開始後1年以上の本体事業所としての実績を有すること、又は、入居者が当該本体事業所において定められた入居定員の100分の70を超えたことがあること
本体1に対するサテラ
イト型事業所の箇所数 最大2箇所まで
※本体ユニット数とサテライトユニット数の合計が「4」以下であることが必要
本体事業所とサテライ
ト型事業所との距離等 自動車等による移動に要する時間がおおむね20分以内の近距離
本体事業所と同一建物や同一敷地内は不可
サテライト型事業所の
設備基準等 本体事業所と同様
指定 本体、サテライト型事業所それぞれが受ける
※ 医療・介護・福祉サービスについて3年以上の実績を有する事業者であること
※ あらかじめ市町村に設置される地域密着型サービス運営委員会等の意見を聴くこと
定員
介護報酬 通常の(介護予防)認知症対応型共同生活介護の介護報酬と同額
基本的には「小規模多機能」の基準に準じた内容だと認識いただいて差し支えないかと思います。これから新たにグループホームの取り組みを検討される方には勿論ですが、既にグループホームに取り組まれている方にとっても興味深いスキームに映るのではないでしょうか。
ご興味をお持ちいただいた方は早めに管轄の保険者へ
以上、数ある改正内容の中から、「特に大きな変化かもしれないな」と感じられた一部分を抜粋させていただきました。地域密着サービスである以上、グループホームの整備は各保険者の計画に左右されてくることはご承知の事かと思いますが、だからこそ「これを機に、グループホームの新設(増設)を検討したい」とお感じになられた方は「先手必勝」の精神で是非、早めに管轄の保険者へ足を運び、情報収集を開始されることをおススメしたいと思います。その上で土地の探索含め、先んじて可能なアクションを開始していくことが未来の成果の獲得確度を高めることにもつながってくるのではないかな、と考える次第です。
私たちも今後、上記に関する有益な情報を入手出来次第、どんどん情報を発信してまいります。
※本ニュースレターの引用元資料はこちら
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第193回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14716.html