医療事業所様向け情報(労務)6月号③
従業員から無期転換の申込があった場合の対応
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長:
先日、パートさんの1人から期間の定めのない契約に変更して欲しいという希望がありました。変更しなければならないのでしょうか。
社労士:
そのパートタイマーの方との契約はどのようになっていますか。
総務部長:
1年ごとの契約にしており、確か10年位、働いてもらっています。
社労士:
なるほど。すでに長く雇用されており、今回、無期転換の申込をしてきたのですね。無期転換の概要を説明すると、①有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、②従業員が申込むことにより、③無期労働契約(期間の定めのない労働契約)に転換できるというものです。今回申込があったパートタイマーの方は、いずれの要件にも該当していると思いますので、労働契約を無期にする必要があります。
総務部長:
そうなのですね。契約更新の時期は毎年4月ですが、いますぐ無期契約に変更する必要があるのでしょうか。
社労士:
いいえ。いまの有期労働契約は有効ですので、その内容を変更する必要はありません。次の労働契約から無期労働契約に変更することになります。
総務部長:
それでは来年4月の契約時に無期契約に変更すればよいのですね。ちなみに、パートさんからの申込は口頭だったのですが、書面を提出してもらう必要がありますか。
社労士:
従業員からの申込や会社の通知を書面で行う義務はありません。ただし厚生労働省は、トラブル防止のためにも「無期労働契約転換申込書」や「無期労働契約転換申込み受理通知書」のひな型を公開し、書面でやり取りすることが望ましいとしています。
総務部長:
なるほど。今後、申込が増える可能性もあるので、書面を準備することにします。その他、何か注意点はありますか。
社労士:
無期転換した従業員に適用する就業規則の整備が必要になります。パートタイマー就業規則は有期労働契約のパートタイマーの方にのみ適用となっていることもあるので、そのようなときは無期転換したパートタイマーの方に適用する就業規則を定めるとともに、特に定年の定めの部分をしっかり確認する必要があります。
総務部長:
ありがとうございます。一度、確認してみます。
【ワンポイントアドバイス】
- 有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、従業員からの申込により、無期労働契約に転換する。
- 無期労働契約への変更は、申込時点の有期労働契約が満了した日の翌日から行われる。
- 無期転換の申込や受理の通知は書面で行うことが望ましい。
(次号に続く)