「入浴介助加算は始まり。通所介護は発想の転換を」
今年4月の介護報酬改定で新設された通所介護の「入浴介助加算(II)」− 。利用者の自立支援・重度化防止に向けたサービスの提供を促すものだが、このインセンティブの導入にはどんな意義があるのか?
日本デイサービス協会の森剛士理事長(ポラリス代表取締役)に語ってもらった。森氏は先月、ケアマネジャーの加算(II)への理解が必ずしも十分でないケースも散見される、と指摘する声明を出して注目を集めた。(介護ニュースより)
* 入浴介助加算(II)は55単位/日。専門職らが利用者の自宅を訪問して浴室環境を確認すること、それを踏まえた個別計画を多職種連携のもとで策定すること、計画に沿った入浴介助を事業所で行うことなどが要件。利用者が自分自身の力で、あるいは家族やヘルパーなどのサポートを受けながら、それぞれの住まいで入浴できるようにすることが目的。
《 日本デイサービス協会・森剛士理事長 》
−− 加算(II)の創設をどう受け止めていますか?
極めて意義が大きいですよね。自立支援・重度化防止に向けたアセスメント、計画作りが評価されることは非常に重要なことでしょう。これは何も入浴だけに限らず、他にも様々なアプローチで具体化していかねばならないことだと考えています。
例えば、背中がうまく洗えない利用者がいたとします。改善につなげる計画を作って適切に介入していくことは、よく考えればごく当たり前のことではないでしょうか。本当は自宅で入浴できるのに、本人や家族の要望なども踏まえて事業所で職員が入浴を済ませてしまうことは、自立支援・重度化防止という介護保険の理念に合いません。こうした"当たり前"に改めて焦点が当たったわけですから、私は良いことではないかと捉えています。
−− 事業所には影響が及ぶでしょうか?
今後は多くの事業所が少しずつ、自立支援・重度化防止の理念に沿った取り組みに力を入れていくことになるでしょう。単に入浴を済ませるだけでなく、可能であれば住み慣れた自宅で、自分自身の力でお風呂に入ってもらうことを目指すサービスへ、徐々に変わっていくとみています。
今のところまだ、そうした意識が必ずしも十分に浸透しきっていない現場もあると言わざるを得ません。我々は通所介護の事業者として、ケアマネや他の事業者とも連携しつつ現状を改善していく責務があると認識しています。
−− 今後、制度はどんな展開になるでしょう?
介護保険の進む先を検討している厚生労働省は、自立支援・重度化防止や科学的介護の方向へ大きく舵を切りました。今回の加算(II)の創設はきっと始まりに過ぎません。例えば食事や運動、移動など、他のアプローチにも同様の考え方が広がっていくと思います。
今後は恐らく、事業所もケアマネもサービスの質がより厳しく問われていき、他と比べられる機会も今より増える時代が来るはずです。事業者、職員、ケアマネ、更には一部の利用者・家族も含め、自立支援・重度化防止の方向へ発想を大きく転換していく必要があるのではないでしょうか。