介護事業所様向け情報(労務)10月号②
厚労省のホームページで企業名公表される労働基準法の違反事案
過労死等ゼロを目指す取組みの強化の一つとして、労働基準関係法令違反にかかる公表事案が厚生労働省および都道府県労働局のホームページに一定期間掲載されることになっています。以下では、公表される事案の基準と労働基準法の公表事案をとり上げます。
1. 公表事案となる基準
厚生労働省のホームページに掲載される事案は、労働基準関係法令違反の疑いで送検、公表された事案(送検事案)や、厚生労働省が企業名を公表するとして示された通達に基づき、都道府県労働局長が企業の経営トップに対し指導し、その旨が公表された事案(局長指導事案)です。
掲載期間は公表日から概ね1年間で、公表日から1年が経過し最初に到来する月末にホームページから削除されます。また、公表日から概ね1年以内であっても、送検事案は、ホームページ
に掲載を続ける必要性がなくなったと認められる場合、局長指導事案は、是正および改善が確認された場合、速やかにホームページから削除されることになっています。
2. 労働基準法違反の公表事案
2020 年8 月1日から2021年7 月31日までに公表されたもので、労働基準法違反にかかる事案として次のようなものがあります。
[労働基準法第15 条違反]
労働者2 名に、労働契約の締結の際に労働条件を、書面を交付する等により明示しなかった
[労働基準法第32 条違反]
労働者1 名に、36 協定の延長時間を超える違法な時間外労働を行わせた
[労働基準法第36 条違反]
外国人技能実習生5人に1ヶ月100 時間を超える違法な時間外・休日労働を行わせた
[労働基準法第37 条違反]
労働者4 名に対し、4 ヶ月間の時間外労働、休日労働、深夜労働に対する割増賃金合計約37万円を支払わなかった
[労働基準法第39 条違反]
労働者6 名に、年5 日以上の年次有給休暇を取得させなかった
[労働基準法第75 条違反]
業務上負傷した労働者に、労災保険を使用させず、健康保険を使用し、治療費を全額負担しなかった
[労働基準法第104 条の2 違反]
労働基準監督署長による報告命令に対し、虚偽の事実が記載された書類を提出し、虚偽の報告を行った
働き方改革で年次有給休暇の取得義務化や、時間外労働の上限規制にかかる法改正が施行され、より一層、労務管理の重要性が高まっています。また、公表事案から分かるように、様々な面において監督指導が行われています。適切な労務管理が行われているかを確認し、課題があったときには早めに是正を進めていきましょう。