医療事業所様向け情報(労務)12月号②

65 歳以上複数就業者の雇用保険マルチジョブホルダー制度

雇用保険では、主たる事業所で1 週間の所定労働時間が20 時間以上、かつ31日以上の雇用見込み等の適用要件を満たした場合に被保険者となります。兼業・副業が普及する中、複数の事業所で働く労働者が増加している状況に対応するため、2022 年1月から「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設され、まずは65 歳以上の労働者に対し適用されることになりました。

1.マルチジョブホルダー制度

 雇用保険マルチジョブホルダー制度は、1 つの事業所では雇用保険の適用要件は満たさないものの、2 つの事業所での勤務を合計して次の要件をすべて満たす場合に、特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。
■適用要件
• 複数の事業所に雇用される65 歳以上の労働者であること
• 2 つの事業所(1 つの事業所における1 週間の所定労働時間が5 時間以上20 時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20 時間以上であること
• 2 つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
 なお、申出の日に被保険者資格を取得し、要件を満たさなくなった日に資格を喪失します。さらに、いったん被保険者となった後は、任意脱退はできません。

2. 取得手続き等の流れ

 通常の雇用保険資格の取得・喪失手続きは、事業主が行いますが、マルチジョブホルダー制度は、マルチ高年齢被保険者としての適用を希望する労働者本人が手続きを行います。
 事業主は、労働者本人から手続きに必要な雇用の事実や所定労働時間等の証明を求められたときに、その証明を行います。この証明に基づき、労働者本人が適用を受ける2 つの事業所の必要書類を揃えてハローワークに申し出ます。
 ハローワークでは申出の内容を確認し、取得手続きを行ったうえで、労働者本人および適用となった2 つ事業所に通知します。事業主はこの通知に基づき、給与から雇用保険料の控除をし、年度更新において雇用保険料を納付します。
 ちなみに、マルチ高年齢被保険者が失業した場合で一定の要件を満たしたときは、被保険者であった期間に応じ、基本手当日額の30 日分または50 日分の一時金として高年齢求職者給付金を受給することができます。

 

 マルチ高年齢被保険者は労働者の希望に基づき適用するためのものであり、また、現状では65 歳以上の労働者に限られているため、被保険者となる対象者は限定的であると思われます。
しかし、適用要件を満たした従業員が手続きを行うことで、ハローワークから会社に対して資格取得の通知が来るため、制度の概要は押さえておきましょう。

 

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