介護処遇改善支援補助金のポイントのまとめ

1,1月あたりの介護報酬総単位数によって受給額が変動
 いよいよ2月より、介護処遇改善支援補助金がスタートする。介護職員を対象に賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提として、収入を3%程度(平均で月額9,000円)引き上げるための措置となる。補助額は、1か月あたりの介護報酬総単位数(介護職処遇改善加算および介護職特定処遇改善加算の金額を含めた総額)にサービス別交付率を乗じる。補助額については、同一の設置者・事業者が運営する他の事業所・施設に賃金改善に充てることが出来るとして、法人一括での処理が可能となった。そのため、配分金額を決める際には、法人全体でやりくりができるようになります。
 但し、人員基準上、介護職員の配置が少ない、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、福祉用具賃貸、居宅介護支援、介護予防支援については対象外であるため法人一括であっても、併設する居宅介護支援のケアマネージャーへの支給はできないことになる。

2,その他の職員への分配も可能
 介護職員特定処遇改善加算と同様に、その他の職員への処遇改善にもこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認めている。その他の職員の範囲は各事業において判断するということになる。そのため、介護報酬の請求事務をうけもつ本部の事務職員も初級対象になる。この補助金の場合、その他の職員への分配について特定処遇のような分配ルールは設けられていない。事業所の裁量に任せる形となる。そのため、その他の職員に分配を行う場合には、介護職員の処遇改善を目的にした補助金であることを十分に踏まえた分配を行う必要があり、その他の職員に過度な分配を行った場合、指導対象になる可能性があることに注意すべき。

3,介護職1人9000円の支給は困難
 補助金は介護報酬総単位数にサービス別効率を乗じる計算方法であるため、一人当たりの9000円支給することは実際には困難。理由は処遇改善加算と同様に月々の稼働率に左右されるから。新型コロナウィルス感染者が出たことで、休業や利用控えがあった場合には大きな減額となる。また、分配する対象職員数でも、一人当たりの支給額はかなり変動することになる。一人当たり9000円の支給額が可能になるのは、毎月の稼働率が100%に近く、介護職員の人員基準通りで運営を行う場合で、その他の職員への分配を見送る場合ケースに限定される。

4,2月分から賃金改善が必要
 対象期間は、2022年2-9月の賃金引き上げ分となる。取得要件は2月の時点で処遇改善加算のⅠ~Ⅲのいずれかを取得している事業所である。2月段階でⅣ~Ⅴ算定している事業所は受給できない。かつ、2,3月から実際の賃上げを行っている事業所とされている。ここでいう2月分とは、2月に支給される給与、または、例えば2月末締で3月に支給される2月分の給与のどちらでもよい。
 さらに、介護職員処遇改善加算の支払いに合わせることも可能です。2月請求分の介護職員処遇改善加算は3月に国保連合会に請求され、4月25日に振り込まれる。そのため、2月の処遇改善手当を4月または5月の給与で支払う事業所も多い。この場合、補助金につても現行の処遇改善加算と同じ扱いとするため2月分の補助金を4月または5月に支給することも可能となる。ただし、処遇改善加算を年2回の賞与のみで支給する事業所の場合は、この支給サイクルは使えないものと思う。
 また、補助金の取得を行う介護サービス事業所者は、2月分から賃金改善を行った旨を2月末日または3月末日までに都道府県知事に報告する。この場合、メール等の提出も可能とした。

5,賃金改善の合計額の3分の2以上を月額支給に
 補助金は、賃上げ効果を効果的に資するよう、2月から9月分までの賃金改善の総合計額の3分の2以上はベースアップとして、基本給または決まって毎月支払われる手当の引き上げに充てることが要件となります。毎月支払われる手当とは、支給が不安定な、夜勤手当や残業手当、休日出勤手当などは不可となります。現実的には、処遇改善手当などの名目での支給が一般的となる。手当の場合、毎月支払われることが要件であるが、固定金額であることは求めていない。
 就業規則(賃金規程)の改定に一定の時間を要することを考慮して2,3月分は一時金での支給が可能とされている。この場合、一時金扱いであるため、3分の2以上をベースアップに充てる金額には含まれないので注意が必要となる。4月から9月までの月額支給分で8カ月の総支給額の3分の2以上を満たす必要がある。

6,3分の1未満の部分は補助金の調整可能部分
 3分の2以上をベースアップに充てることで、残りの3分の1は賞与などの一時金での支給が可能である。補助金全額を毎月のベースアップに充てることはお勧めしない。理由は補助金額が稼働率の影響をうけるからだ。毎月のベースアップ部分は、稼働率が下がったとしても減額することは難しく、結果的にお事業者の持ち出しとなる。この補助金では持ち出しでの自己負担は求めていない。何らかの理由で、稼働率が下がり補助金額が減額となった場合は、賞与で減額となった分を調整すべきだ。

7,4月15日までに計画書、1月末に実績報告を提出
 受給するには、4月15日までに処遇改善計画書を提出し、1月末に実績報告書を提出する。2月から4月までの3か月分はついては、6月から国保連から一括で振り込まれ、
11月から1か月分ずつ振り込まれる

8,10月からは加算に切り替わる
 この補助金は2月から9月までの8か月間だけの支給である。10月からは基本的な算定要件はそのままに、加算に切り替わることになった。9月までは補助金であるため、利用者負担はない。10月からは加算になるため利用者負担が発生する。また計算方法が異なり1月あたりの介護報酬総単位数(介護職員処遇改善加算及び特定処遇改善加算の金額を差し引いた金額)となる。補助金では介護処遇改善加算と特定処遇改善加算を含めた金額であり、加算では差し引いた金額となる。そのため加算率は補助金より引き上げられる。
 尚、24年3月までの処遇改善加算関連が3本存在することとなり、事務負担の増加が懸念されているが、今年の10月に一本化などで混乱させるより補助金の仕組みをそのまま継続させことは事務負担軽減になると判断されたようだ。しかし、来年からは24年度報酬改定の審議が行われる為、その段階で今後のあり方が検討されることになる。

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