「人を育てる」井村 雅代へのインタビュー記事
──五輪で合計13個ものメダルを
獲得してこられましたが、
人を育てる秘訣は何ですか。
試合が終わった時に、
やっぱりこの先生に
ついてきてよかったと言わせたい。
いつもそう思いながら指導しています。
この頃は特に、この子たちの
人生の大切なひと時を
預かっているんだと強く
思うようになりました。
自分の導き方一つで
全く違う人生を辿ることになる。
だから一人ひとりの
人生を大事にすること。
それは特に心掛けています。
ですから日々の練習では、
一つでもいいから絶対に
上手にして帰らせよう
という思いで指導するんです。
しんどいだけで
終わらせてはいけない。
何か一つでも進化した
自分を体験させてやろうと。
──選手を叱る際に心掛けて
おられることはありますか。
叱る裏には責任があります。
それはしっかり自覚しなければいけません。
私もできることなら
褒めて勝たせたいですよ。
でも残念ながら難しい。
褒めたらその子は、
これくらいでいいんだって
思い込んでしまうんです。
NGを出して、もっともっとって
さらに上を求めるのは、
その子の可能性を
信じているからなんです。
この子たち一人ひとりに
ものすごい可能性がある。
私はそう信じているんですよ。
もちろん、たまには褒めたい
って思うこともありますよ。
それでリオ五輪の時、
決勝前の練習でちょっと褒めたら
デレデレ緩んできたんです。
これはあかん!
と思ってまた叱りましたけど、
最後までそんなことを
繰り返していましたね。
やっぱり人というのは、
追い込まれて追い込まれて、
もっともっとって
求められるところから、
本当の力って
出るんじゃないでしょうかね。
──叱るのも簡単ではありませんが、
何かコツはありますか。
叱るコツは三つあると私は考えます。
一つは現行犯で叱ること。
二つ目が直す方法を教えること。
三つ目がそれでOKかNGかを
ハッキリ伝えることです。
そこまでやらないなら叱ってはダメ。
それは無責任です。
──選手には嫌われても
構わないともおっしゃっていますね。
全然構わない。
だから余計に、すべてが終わった後に
「この先生についてきてよかった」
って言わせたいんです。
だってその選手を指導するっていうのは、
これ運命的な出会いですよね。
だからなおさら
「この人に教えてもらってよかった」
と言わせたいんです。
『致知』2016年12月号
※特集「人を育てる」より
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