Q 支給漏れの資格手当の遡及払いについて教えてください。

Q,当院では、業務に必要とする資格以外にも一定の資格を保有している場合、資
格手当に 5,000 円を上乗せして支払っています。2021 年 4 月に本人から手当の対
象となる資格を取得したと聞いていたのですが、手当に上乗せして支払うのを忘
れていました。今回、本人の申告によって発覚したのですが、いつまで遡さかのぼ
って支払えばよいでしょうか?

 

A, 本人から未払い賃金支払いの請求があったのであれば、本来支払うべきだった
日に遡って支払うことが必要です。現在、職員が未払い賃金を請求できる権利(以
下、賃金請求権)は 3 年であり、今回のケースは本来払うべき 2021 年 4 月まで
遡って支払う必要があります。

 

詳細解説:
1.賃金請求権について
未払い賃金があったときには、遡って支払う必要があります。賃金請求権の消滅時効
期間は 2020 年 4 月 1 日に 2 年から 5 年に延長され、その上で、当面の間は 3 年とする猶予期間が設けら
れました。今回のケースは、この消滅時効にかからない期間での請求ですので、2021 年 4 月
まで遡って支払う必要があります。なお、延長された賃金請求権の消滅時効期間である 3 年は、2020 年 4 月 1 日以降に支払
われる賃金に関するものについて適用されます。


2.給与計算上の注意点
給与計算の誤りによって、賃金の支払い漏れが発覚した場合、実務上は職員の合意を得て、次の給与で漏れていた分を上乗せして支
払うことが多くありますが、本来、支払わなければならない賃金が支払われていなかったことを考えると、できるだけ早く支払うことが
求められます。

また、給与計算の誤りによって賃金を遡って支払うことになったとき、その賃金が割増賃金の基礎となる賃金だった場合は、時間外
労働等の単価も変わってくることになり、結果として未払い残業代が発生することもありえます。遡って支払うだけでなく、割増賃金の
基礎となる賃金として算入しなければならない賃金か否かの確認も必要です。
そもそも、職員の賃金にかかる変更があった場合は、支払い漏れや支払い過ぎといった給与計算の誤りが発生しやすくなります。

今回のように、本人からの申告がなければ、医院が把握することのできない状況であれば、書面で申請してもらい、確認し
た上で支払いの対象とするといったルールを定めておくことで支払い漏れを防止しましょう。

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