Q,配偶者の社会保険の扶養の範囲内の収入で働くパート職員がいます。時給を引 き上げたので、このまま働くと年間収入が 130 万円以上となりそうです。健康保 険の被扶養者の条件として、年間収入が 130 万円未満という基準がありますが、 どのように対応したら良いでしょうか?
A,パート職員の年間収入が 130 万円以上になった場合、配偶者の健康保険の扶養 から外れることになります。この場合、週の所定労働時間および月の所定労働日 数によって、パート職員は、状況に応じ事業所の健康保険・厚生年金保険または 国民健康保険・国民年金に加入することになります。
詳細解説: 1.健康保険の扶養の収入基準 健康保険の被扶養者となる収 入の基準は、原則、年間収入が 130 万円未満で、かつ、扶養者 の年間収入の半分未満であるこ ととなっています ※1。 ここでの収入とは、扶養の認定日以降の年 間の見込み収入をいい、被扶養者の収入に は、雇用保険の基本手当や健康保険の出産手 当金等(以下、基本手当等)も含みます。 具体的には、給与収入※2は月 108,333 円以下、 基本手当等は日額 3,611 円以下であれば、年 間収入が 130 万円未満と判断されます。年間 収入が 130 万円以上となる場合、対象のパー ト職員は扶養から外れることになります。 なお、一時的に収入が多くなることによ り、年間収入が 130 万円以上となるときに は、すぐに扶養の認定が取り消されるのでは なく、給与明細書、雇用契約書等と照らし、今 後の見込み収入で判断することになります。 扶養の認定は扶養者の保険者が行うため、詳 細な取扱いは、配偶者の勤務先を通じて保険 者に確認することになります。 2.職員自身での社会保険の加入 扶養から外れることになったパート職員 は、自身で社会保険加入することとなり、週 の所定労働時間かつ所定労働日数が、正職員 の 4 分の 3 以上の場合は、事業所の健康保 険・厚生年金保険に加入します※3。これらの 所定労働時間・所定労働日数に満たないとき には、個別に国民健康保険・国民年金に加入 します。 今回の質問のように、時給を引き上げた パート職員が、今後も扶養の範囲内の収入で 働き続けることを希望するのであれば、所定 労働時間を減らして年間収入が 130 万円未満 となるような働き方の検討も必要になりま す。まずは、職員と今後の働き方を話し合う と良いでしょう。
今後、同一労働同一賃金の考え方が浸透していくに従って、この問題に直面するケースが
増えてくるものと思います。「配偶者が反対しているからこの基準を超えられない」というような人については、契約更新時などに「1年間の収入が待遇改善によってこれぐらいになりますよ」ということを示して、きちんと説明をすることが大切になります。そうすれば、年末にバタバタと就業時間調整することもなくなります。労働者ごとに就業調整の基準は異なります。例えば、配偶者の家族手当がどの様な基準で支払われるのかは配偶者の会社の規定次第ですし、社会保険に加入する、しないという事もご本人の希望がありますから、その希望をよく聞きながら、契約更新時に相談されることをお勧めします。一方で、待遇改善の結果103万円、130万円は超えるけれども、それによって65歳以降の年金支給額が増える、健康保険でも傷病手当金の支給対象になる等、メリットも多いことをきちんと知っていただき、より長期的にみれば会社も本人もハッピーになることもあることを認識頂くことも大切のように思います。
(※1)被扶養者が 60 歳以上または障害者のとき は、年間収入が 180 万円未満 (※2)交通費(通勤手当)を含む (※3)常時 501 人以上の特定適用事業所は、① 週の所定労働時間が 20 時間以上あること、②雇 用期間が 1 年以上見込まれること、③賃金の月額 が 88,000 円以上であること、④学生でないこと の 4 点をすべて満たす場合
以上